2008年03月08日

戦争は地獄だ。ところで、費用は?

戦争の費用について。ノーベル経済学賞受賞者ジョセフ・スティグリッツが発言していますが、それを出発点に、費用を分析した記事。
戦争は地獄だ。ところで、費用は?
イラクとアフガニスタンに仕掛けた戦争は週に35億ドル
ウィリアム・ハートゥング
2008年3月6日
ZNet原文

戦争は地獄だ。人は命を落とすし、危険だし、高く付く。ところで、本当のところ、どのくらい高く付くのだろうか。

最近行われたインタビューで、ノーベル経済学賞を受賞した経済学者のジョセフ・スティグリッツは、イラク戦争の経済社会的コストは5兆ドルに達するかも知れないと述べた。

あまり実感のわかないくらい大きな数字である。すべてを一ドル札で並べたとき5兆ドルで地球を何周するかを考えてもやはりこの数字の意味はわからないし、ロードアイランドを何重に覆うことができるか考えてもやはりわからない。クリントンとオバマとマッケインとハッカビーの選挙キャンペーン・ボランティアにバーゲンで6兆個のドーナッツを買うことができるというのは印象深くはあるけれど、やはりあまりよくわからない。実際のところ、ブッシュ政権が戦争に費やした費用は、人間が理解出来る範囲をすでに超えてしまっている。

ところで、別の方法を試みてみるとどうだろうか? 数兆ドルという膨大な数を100万ドルとか十億ドルといった数字に分解しては? たとえば、ジョージ・ブッシュの戦争が一週間に費やす費用はいくらくらいなのだろうか?

そう聞いてくれると嬉しい。イラクとアフガニスタンに米国が仕掛けている戦争の費用を一緒に考えると----というのも、いうれについても私たちの子どもや孫の世代が支払うことになるのだから----控えめな見積もりで一週間に35億ドルである。一週間に、ということを忘れないでいただきたい。

対比のために言うと、核の拡散を監視し防止する任務を負った中心的な国際組織であるIAEAに、国際社会の全体が注ぎ込んでいる金額は、一年間に4億ドルに満たない。戦争に注ぎ込まれる費用の一日分よりも少ないのである。米国政府は毎年ちょうど10億ドルを、問題の起きそうな核兵器や弾薬製造物質の安全確保と廃棄に費やしているが、これは戦争コストの2日分よりも少ない。また、米国政府は地球温暖化対策として年間70億ドルを費やしているが、それは戦争コストの2週間分にすぎない。

さて、皆さんは恐らく、毎週35億ドルの金額は、何に費やされているのか疑問に思われるだろう。 どうやったら知ることができるだろう? ブッシュ政権は、イラクとアフガニスタンでの戦争、そしてグローバルな対テロ戦争(GWOT)と称するものに必要だと言われている費用を支払うために、ペンタゴンが現在得ている年間5000億ドルの公式予算に加えて、追加の予算要求を議会に提出している。2008年の追加要求文書159ページを眠り込まずに読むことができるならば、興味深いことがわかる。

たとえば、誰かが5セントでも政府の戦争予算要求を削減しようとすると政府のホワイトカラー戦士たちは泣きわめくが、それを聞くと、人はおそらく毎週35億ドルの費用はすべて「兵士たちに向けられた」ものだと考えるだろう。実際のところ、軍の兵士の支払いや福祉に注ぎ込まれるのは、10%すなわち3億5000万ドル以下である。これは、銃弾から爆撃機までを含むすべてのために戦争契約企業に支払われている毎週14億ドルの4分の1以下である。「ボーイングとロッキード・マーチンのために」軍事支出を現在の規模で保たなくてはならない、というのはスローガンとしては、あまり魅力的ではない。

もちろん、契約企業に流れる資金はすべて、戦争地帯にいる兵士が作戦を安全かつ効果的に遂行するために必要な装備を最も効率的に提供するために必要だと言うかもしれないが、それは間違っている。金のほとんどは、膨大な価格の役に立たない装備のために毎週毎週費やされているのである。適切な装備が提供される場合でも、戦場に届く時期は遅れる。海兵隊の先端装甲車両がその例である。

けれども、装備の費用に入る前に、別の支援一週間分について見てみよう。ペンタゴンも国務省も、ブラックウォーター社やトリプル・カノピー社などの銃を携行する私企業軍事要員にどれだけの資金を注ぎ込んでいるか公表してもいいことはないので隠しているから正確にはわからないが、情報をもとにかなり推測することはできる。例えば、私企業軍事企業に雇われている要員は、米軍兵士の10倍の収入、一週間に約7500ドルを得ている。イラクにいる私企業契約軍事要員5000から6000人のうち10%がこの額を受け取っているとして、毎週4000万ドルになる。残りの要員が控えめな推測として毎週1000ドルを受け取っているならば、それで週に合計1億ドルがイラクで活動する私企業の傭兵たちに費やされていることになる。

それに、イラクで活動している非政府の私企業要員----料理人、武器技術者、通訳と翻訳者、尋問員などの私企業の契約支援要員----の数字を含めてみよう。それらはあわせて恐らく週に3億ドルになる。空軍と陸軍、海軍、海兵隊の制服兵士たち全員に費やされているのとほぼ同じ額である。

信頼出来る推定によると、イラクだけで様々な契約要員は18万人おり、その数はイラク駐留米軍兵士の数より多い。アフガニスタンにはさらに数満員がいる。ただし、そうした非戦闘要員の多くは、料理や洗濯、トイレ掃除といった低賃金の仕事についているため、イラクにいる私企業契約要員の活動に対する総費用はおそらく制服組兵士たちの費用よりもいくらか低くなるだろう。上の推定はそれを考慮したものである。

さて、人員に毎週6億5000万ドルが費やされているとして、残りの30億近くはどこに費やされているのだろうか? 戦車や戦闘機から燃料や食料といった、物品とサービスに費やされる。その大部分は、ボーイングやロッキード・マーチン、ハリバートンの元子会社ケロッグ・ブラウン&ルートなどの企業の懐に流れ込む。

我等が35億ドルの中から支払われる武器や付属品のリストは膨大で気が遠くなるほどである。


M−5カービン銃に毎週150万ドル(毎週900丁)

マシンガンに毎週230万ドル(毎週170丁)

ヘルファイヤ・ミサイルに毎週430万ドル(毎週約50ミサイル)

暗視装置に毎週690万ドル(毎週約2100個)

燃料に毎週1080万ドル

燃料の貯蔵と運搬に毎週500万ドル

F−18E/F戦闘機に毎週1480万ドル(一カ月に一機)

弾薬に毎週2340万ドル
ブラッドレー戦闘車両に毎週3070万ドル(10台)

以上は、リストの一部である。もっと日常的なものについてはどうだろうか?

洗濯とシャワー、便所「毎週11万ドル以上」

パラシュートと空からの供給システム「毎週95万ドル」

除雪「毎週13万2000ドル」

照明「毎週5万ドル」

これらの数字の一部はもちろん米軍が世界で行っている軍事作戦にも用いられているかも知れない。戦争費用の追加予算要求の中にGWOTという言葉を入れることにより、ほとんどどんな出費も含めることができるのだから。

ほかに、次のような数字もある:「死亡賜金」に毎週240万ドル(任務中に殺された家族への支払い)、「特別危険手当」に毎週1060万ドル。

さらに、これらの数字の背後にある死と破壊のため、軍へのリクルートがますます難しくなっていることを忘れてはならない。でもご安心を。追加予算要求の中には、「宣伝とリクルート」のために毎週100万ドルが準備されている。補充には十分でないかもしれないが、試みてはいる。

さらに注意しなくてはならないことは、この数値がペンタゴンがおおやけに行っている要求に基づくものだという点である。ほかに、知らされていないものがたくさんある。何より、ペンタゴンの「緊急」追加予算の分析には、大きなギャップがみられる。

議員でさえ、米国の戦争予算についてははっきりわかっていない。ただし、ペンタゴンと軍サービス関係機関が、イラクやアフガニスタンの戦闘とは関係のないもの、さらに対テロ戦争にさえ関係のないものを、追加予算にどんどん突っ込んでいることはわかっている。

組み入れられているものの中には、開発に数年から数十年もかかるような新装備への要求もある。ジョン・マッケインが最近示唆したようにイラク戦争があと100年続くといったことがない限り、それらが使われることはないだろう。そうした「戦争に使わない」品目の中には、陸軍のハイテク装甲車や通信設備、空軍の新型戦闘機などがある。

現在の戦場でそれらが使われることがないとしても、それらはやはり戦争費用である。イラクとアフガニスタンの戦争に対する追加予算請求に組み込まなければ、資金は提供されないかもしれない。すべては「我等が兵士のために」ある予算案に----そこに兵士たちが決して手にすることのない武器が含まれていたとしても----誰が反対するというのだろう?

これらの追加はかなりの額にのぼる。恐らく毎週5億ドルにのぼるだろう。

これらすべてを考え合わせると、毎週の戦争コストについてかなり詳しいことがわかっているように思えるかも知れない。残念ながらそうではない。ペンタゴンの通常予算と同様の査察が「追加」費用にも入らないかぎり、戦争が続けられる毎週毎週、何億ドルもの予算の使途が明らかにならない。さらに、現在の紛争には何の関係もないようなありとあらゆるペットプロジェクト向けの金がそこに組み込まれる。したがって毎週35億ドルという額を固定のものと考えてはいけない。35億ドル・・・・・・漸増中。

皆さんは自分がますます安全になっていると感じていますか?

[情報源について:国防総省最新の戦争のための追加予算要求をチェックしたい読者はこちらをクリックして(pdfファイル)、「2008会計年度要求中グローバル対テロ戦争予算」を国防長官室から手に入れることができる]

ウィリアム・D・ハートゥングはニューアメリカ財団の「武器治安イニシアチブ」ディレクタ。「And Weapons for All」(Harper Collins, 1994)、「How Much Are You Making on the War, Daddy? A Quick and Dirty
Guide to War Profiteering in the Bush Administration」 ( Nation Books, 2004 )の著者。軍事経済問題に関する彼の論説はワシントン・ポスト紙、ニューヨーク・タイムズ紙、ロサンゼルス・タイムズ紙、ニュースデイ紙、ネーション誌に掲載されている。

[本記事初出はtomdispatch.com。代替的な情報源やニュース、論説をトム・エンゲルハードが提供しているネーション・インスティチュートのブログ。トム・エンゲルハードは米帝国プロジェクトの共同創設者で、「 The End of Victory Culture ( University of Massachusetts Press )の著者。この本はイラクにおけるvictory cultureの玉砕劇を含めた新版が出ている。]

殺された人々の「コスト」は入っていません。なお、スティグリッツへのインタビューがデモクラシー・ナウ!の英語版でありましたので、デモクラシー・ナウ! 日本語版にも現れるかも知れません。

投稿者:益岡
posted by 益岡 at 16:49| Comment(0) | TrackBack(0) | イラク全般
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