2008年01月10日

2007年はイラク占領開始以来最悪の年だった

「イラクの治安改善」が報道されていますが、暴力の根源である侵略と占領は終わっておらず、2007年の状況は全体としていっそう悪化しているようです。
2007年はイラク占領開始以来最悪の年だった
ダール・ジャマイル
2007年1月7日
ZNet原文

イラクの状況は改善されたと声高に主張されているにもかかわらず、2007年はこれまででも最悪の年だった。

今年の大きな動きの一つは、2月半ばに米国政府が導入した兵士の「大波」(大規模増派)である。最も暴力の激しい二地域、バグダードおよびアンバル地方の治安改善が目的だった。6月には、2万8000人のh兵士が増派され、イラク駐留米兵の数はg合計で16万人になった。

秋には、イラクに駐留する米軍要員の数は17万5000人を超えた。これまでで最大の駐留米兵数であり、米国政府は一部撤退について語り続けていたにもかかわらず、現実に派兵された数は政府の主張と矛盾しているようである。

ブッシュ政権は、「大波」がセクト間の殺し合いをおさえ、米国が後押しするヌーリ・アル=マリキ首相政府の政治改革のために時間をかせぐためのものだとも述べている。

兵士増派作戦によって、家を追われたイラク人の数は4倍になったとイラク赤新月社は発表している。2007年末には、国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)は、イラクの国内避難民は推定230万人、国を逃れた難民も230万人以上としている。

イラクの人口は約2500万人である。

NGOの難民インターナショナル」は、イラクの難民問題を「世界で最も急激に悪化している難民危機」と述べている。

10月、シリア政府はイラク人にビザを求め始めた。そのときまで、シリアはビザなしでイラク人を受け容れる唯一の国だった。シリアが新たに導入したこの制限により、バグダードに戻ったイラク人もいたが、その数は5万人に満たない。

最近のUNHCRによる調査では、自発的に帰還した人はそのうち18%未満である。ほとんどが、ビザ切れやs資金切れ、国外退去処分により帰還している。

この数カ月、セクト間の殺害は減ったが、今でも続いてはいる。毎日のようにバグダードの路上には遺体が投げ捨てられ続けている。

暴力が減ったのは、バグダードの多くの地域がセクト間の分断にしたがっているからである。地区全体が、数メートルの高さのコンクリート・ブロックに囲まれており、厳しい治安コントロールがなされている。日常生活は消え失せた。

イラク赤新月社は、難民の10人に一人がバグダードに住んでいたと推定している。

2007年の末には、占領軍に対する攻撃は大幅に減ったが、それでも一カ月に2000件を超える。飲み水の供給や電気などのインフラは改善されているが、侵略前のレベルには達していない。仕事と石油輸出も同様である。イラク政府によると失業は60%から70%にのぼる。

オックスファム・インターナショナルが7月に発表した報告書によると、イラク人の70%が安全な飲み水を手に入れる事が出来ない状態にあり、43%が一日一ドル未満で生活している。この報告書はまた、緊急支援を必要とするイラク人は800万人にのぼるとしている。

「イラクの人々は、ますます不足する食糧、住居、水、下水、医療、教育、雇用に苦しんでいる」と同報告は述べる。「食料援助に依存している400万人のイラク人のうち、政府が運用する公共配給システム(PDS)の配給を受け取ることができているのは現在60%にすぎない。2004年の96%から低下している」。

危うい配給システムに依存している人は1000万人近くいる。12月、イラク政府は、「予算不足とインフレ・スパイラル」のために配給食料の品数を10品から5品に減らすと発表した。公式インフレ率は約70%と言われている。

配給品目削減は2008年に導入されるが、増大する貧困と失業への対策がなければ、社会不安を引き起こす恐れがある。

最も大きな悪影響を受けているのはやはり子どもたちである。侵略前の経済制裁期に子どもたちの栄養失調率は19%だったのが、現在では28%になっている。

2007年はまた、米軍の占領が始まってから犠牲者の最も多い年でもあった。「米国の外交政策改善を目的とする独立無党派の大衆組織である「公正な外交政策」というグループは、米軍主導の侵略と占領の結果殺されたイラク人の数を113万9602人と推定している。

今年イラクで殺された米軍兵士の数は894人で、ICasualties.orgによると、占領が始まってから最も多い犠牲者数である。

今日まで、少なくとも3896人の米軍兵士がイラクで殺されたと米国国防総省は発表している。

暴力を減らすために米軍が採っている作戦の一つは、元レジスタンス戦士に金を出すことである。2007年後半に、米軍は、元民兵を「憂慮する現地市民」と呼んで、月々300ドルを支払い始めた。

アンバル県ではこの作戦により暴力は減ったが、支配的勢力であるシーア派政党とスンニ派の政治的分断を促した。金を受け取っている「憂慮する市民」の大多数はスンニ派ムスリムである。マリキ首相は、これら「憂慮する現地市民」が政府の治安部隊に組み込まれることは決してないと述べている。政府の治安部隊は大多数が様々なシーア派民兵のメンバーからなっている。

いわゆる「大波」作戦のもう一つの失敗は、米国が後押しするバグダードの政府がかつてないほど分断されていることにも示されている。和解の希望は費えた。

最近ABC/BBCが行なった世論調査では、スンニ派の98%とシーア派の84%は、米軍兵士全員がイラクから出て行くことを望んでいる。

[ダール・ジャマイルはイラクの報道を続けている独立ジャーナリスト]

投稿者:益岡
posted by 益岡 at 23:35| Comment(0) | TrackBack(0) | イラク全般 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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