ペトラウス:議会は目がくらみ、人々は裏切られる
フィリス・ベニス
2007年9月13日
ZNet 原文
「あそこの奴らを皆殺しにするわけにもいかない」
デヴィッド・ペトラウス将軍・2007年9月13日 NPR
イラク戦争が「思考力を持った男の戦争」である必要性を説明して
* * *
まだ知らない人のために。イラクで戦地勤務している現役の兵士7人がニューヨーク・タイムズ紙にとても力強い論説を書き、ブッシュ政権の戦略と戦争「成功」のプロパガンダを非難したが、論説を書いたうちの二人が、今週の初めにイラクで殺された。このところ、退役軍人は誰もが、軍を引退 してからイラクでの戦争を批判している。現役の将軍で、より地位の低い兵士に匹敵する勇気を持っている者はいないのだろうか?
* * *
- ペトラウス将軍の報告書は、少しだけ兵力数を微調整したうえでイラクでの戦争を続けるよう呼びかけている。彼は、ここ数週間のうちに4000人の兵力増派を行おうというペンタゴンの短期計画には言及していない。
- この報告書は、イランに対する米国の圧力を増大させる方向にし向けるよう作られている。
- メディアが「大規模な撤退を求める圧力は無くなった」というのは正確である。民主党が本気で反撃するきざしはない。
- イラクでは暴力が減っている、生活水準が向上しているなどといったペトラウスの主張の多くについては、それが本当かどうかという重大な疑問があり、それに対しての答えは与えられていない。
- 新たにイラクで行われた世論調査では、ますます多くの人が占領に反対し、即時撤退に賛成している。そして戦争と占領が行われてきたこれまでの中でも最もひどい状況にあると自分たちの生活を評価している。
* * *
ペトラウス将軍とクロッカー大使の言葉は何度も何度も繰り返し報じられているため、いつもは話題の中心にある「世界的な対テロ戦争」というブッシュ政権のイラク占領正当化の言葉さえ脇に追いやっているほどである。この言葉は疑問があるときに持ち出されるが、そうでなければ無視される。アッカーマン議員はこの問題をさらに進め、イラクにおける「サージ」で米国を攻撃するかも知れないテロリストを捜し出し取り除くことができるなら、誰も兵士を撤退させたりしないだろうが、イラク戦争はテロリズムと関係ないため、そうはならないと述べている。
ただし、アッカーマンは明白な点を指摘していない。すなわち、このラウンドで米国が「今日の標的」としているのはイランだという点である。概ね「朗報」であるはずのペトラウスのニュースを差し引きゼロにしてしまう「悩ましい」ニュースは、米国が考えていたよりも深くイランはイラクに関与しているというものである。イランは我々が考えていたよりも大きな問題である。イランは米国の要員の死の背後にいる。イランは悪の権化である。イランへの圧力を強めるためになされた発言かとの記者の質問にペトラウスは違うと答えたが、それがポイントであることに疑問の余地はない。コンドリーザ・ライス米国国務長官もこのキャンペーンに参加し、イランを「非常にやっかいな隣国」と述べ、彼女の副官ジョン・ネグロポンテは、再興しているタリバンに対してイランの兵器が提供されていると主張している。
米国下院でペトラウスが月曜日に行なった演説の際には、共和・民主両党の議員は、ペトラウス将軍の胸に溢れるほど付いたメダルと落ち着いた抜け目のないふるまいに怖じ気づいて、彼の発言に疑問を差し挟もうという考えさえ思い浮かばなかったようである。上院では活発な議論が交わされたが、それにもかかわらず、ペトラウス=ブッシュ路線が主張する、現状維持、数千人の兵士の撤退、2008年夏までに2007年1月の「サージ前」の規模に戻す、今後極めて長期にわたって駐留をつづける、という見解に強い疑問を呈する者はいなかったようである。ペトラウスは、「私は[2008年]3月にもう一度ここにきて、何人の兵士が帰国できるか改めて報告する」といったような言葉を述べた。
ペトラウスの勧告は、2007年末までに「サージ」のために注ぎ込んだ兵士のうち約4000人を撤退させ、2008年夏までに「サージ」の兵力3万人を撤退させることを検討するというものである。それにより、「サージ前」の兵士規模13万人は、無期限にイラクに留まることになる。けれども、今年末までに4000人の兵士を削減するという主張さえ、正しくないことがわかっている。ペンタゴンは先週、これからの数週間で兵力を4000人増強し、全体で17万2000人規模にすると発表した。したがって、12月までに[サージ」に注ぎ込まれた4000人の兵士を「削減する」という主張は、単に、現在の増大した兵士数16万8000人に戻るだけなのである。
木曜日に、メディアは一致して、ブッシュと議会が基本的に同じ「妥協」案に賛成していると述べた。ニューヨーク・タイムズの見出しは「ブッシュは折衷案として限定的イラク撤退を推進」とあり、ワシントン・ポストは「民主党はイラク政策について折衷案を推進」と掲げている。
ペトラウスが兵士数の微調整を提唱したことに民主党はやはり喜んでいる。わずかな兵力の撤退に言及して、これは現状維持の戦略ではないことの証拠だと主張できるからである。
民主党は戦争の資金を取り下げることについて[人々の票を委託されたわけではない」という使い古された呪文を繰り返している。けれども、平和運動に関わる多くの組織は、ブッシュに拒否権を発動させる危険なしに戦争を止めるための別のやり方を模索している。
- 予算委員会の委員長はウィスコンシン州選出デヴィッド・オベイ議員で、予算委員会では1410億ドル(あるいはそれ以上)の補正予算法案の議論が新たに始まる。彼は、この予算案を委員会で通すことを拒否することで、予算案を立ち往生させることができる。採決されない予算案にブッシュが拒否権を発動することはできない。下院議長は、直接下院で投票を求めることで委員会の採決プロセスを避けて通ることができるが、アメリカ合州国人の70%が終わらせたがっている戦争を続けるために投票を進めたがるとは思えない。
- 議会(あるいは予算委員会)は、戦争のための追加補正予算1410億ドルを捻出するための歳入源を特定するよう求めることができる。それはすなわち、政府が金をどこから手に入れるのか明示しなくてはならないということである。戦争で儲けた企業に対する税金の引き上げによって? 資本利得税の引き上げによって? あるいは----こちらの方が可能性は高いが----貧しいコミュニティに対する社会福祉の削減、病院の閉鎖、中国からのさらなる借り入れによって?
議会とメディアは、ペトラウスが示した図と表に強く感動したようである。けれども、それらの数値がどこからきたのか、どうやって算出したのかの説明を求めた者は一人もいなかった。報告は、基本的に、「サージ」の準備段階から始まっており、戦争と占領の最初の3年間に対してはまったく注意が払われていない。最初の主張は、イラク人民間人死者数が大きく減ったと述べている。しかしながら、戦争が始まった当初から、ペンタゴンは「死者数など数えない」という立場を貫いてきた。いつペンタゴンがその方針を変えたのか、誰もペトラウスに聞かなかった。ワシントン・ポストをはじめとするいくつかのメディアは、現在ペンタゴンが出している数字は、自動車爆弾による死者を除外し、後頭部を撃たれて殺された場合(分派/テロリストによる殺害を示唆する)と額を撃たれて殺された場合(犯罪を示唆するので除外される)を区別するなど、恣意的な基準に基づいていることを指摘している。
BBCとABCが新たに行なった世論調査結果が今週公開されたが、それによると、イラク人の生活危機は悪化しており、占領軍の即時撤退を求めるイラク人の数は増加を続けている。
- 47%のイラク人が、米英軍の即時撤退を求めている(昨年は35%)
- 85%のイラク人が、米英軍を、ほとんどあるいはまったく信頼していない
- 70%のイラク人が、「サージ」作戦で兵力が投入された地域で安全状況が悪化していると考えている
- 65%のイラク人が、政府の実務力は以前よりも悪いと考えている
- 70%のイラク人が、政治的対話の環境は悪化していると考えている
- 77%のイラク人が、自分の一般生活水準は悪いかひどく悪いと考えている
- 93%のイラク人が、電力供給は悪いかひどく悪いと述べている
- 80%のイラク人が、仕事環境は悪いかひどく悪いと述べている
- 75%のイラク人が、安全な飲み水を手に入れる状況は悪いかひどく悪いと述べている
- 92%のイラク人が、燃料の入手状況は悪いかひどく悪いと述べている
- 29%のイラク人が、生活は良くなるだろうと考えている(2005年には64%がそう考えていた)
おそらく、ハロウィーンのスローガンを、「計略と虐待」とすべきなのだろう。アメリカ人は計略にはまり、イラク人は虐待されている。
フィリス・ベニスは「政策研究所」のフェローで、「Challenging Empire: How People, Governments and the UN Defy U.S. Power」の著者。今後の記事を直接メールで受け取るための登録は、www.ips-dc.orgにアクセスして、「Stay Connected」をクリックし、「New Internationalism Project(および興味を引く他のトピック)を選ぶこと。
投稿者:益岡



