2007年08月11日

バグダードからの朗報:石油法は行き詰まった

不法侵略・占領者が傀儡政権に押しつけようとしている石油略奪法案について、イラクの人々が抵抗しはじめています。
バグダードからの朗報:石油法は行き詰まった
パニックと治安危機を、イラクの富を外国に手渡す隠れ蓑に利用すべきではない
ジョナサン・スティール
2007年8月5日
英ガーディアン紙
ZNet 原文

バグダードからついに喜ばしい通知がやってきた。イラク国会は、米国政府が採択するよう圧力をかけ続けている石油法を採択しないまま、夏期の休会に入った。ブッシュ政権にとってこれはいらだちの種である。というのも、石油法の採択は、米国議会に米軍撤退の期限を決めさせないよう画策しているブッシュ政権にとって「ベンチマーク」となっているからである。ヌーリ・アル=マリキ政府が飛び込むよう求められたこの政治的な道は、米軍の「大波」とセットになったものである。現在のイラク駐留米軍司令官デヴィッド・ペトラウス将軍は来月軍の進捗報告を提出することになっており、ジョージ・ブッシュは9月半ばにマリキ政権が改革に向けてどのように進んでいるか米国議会に報告することになっている。

いずれの政策をめぐっても、ブッシュ政権は時間をかせぐために作戦を長引かせそうな気配がある。ブッシュとブッシュ政権高官たちはすでに、「サージ」をもう一年継続するとほのめかしており、ペトラウスの報告は暫定的な採点票として扱われるにすぎない。ベトナム時代の「トンネルの先の光」という宿命的な言葉は使わないだろうが、進歩が見られるので議会はもう少し我慢すべきだとは言うだろう。同様に、バグダードの米国大使ライヤン・クロッカーは石油法というベンチマークは急ぎのものではないと見下している。彼は米国のメディアに、移民や保健医療などの複雑な問題については、米国議会は何年もかけて改革を検討するではないかと指摘している。それを考えれば、イラク議会が、外野が期待するようにすべてを迅速にやると期待するのはフェアではない、と。

とは言っても、ブッシュ政権の、特にディック・チェイニー副大統領と石油ロビーは、石油法が行き詰まったことに激怒している。主な理由は、しばしば示唆されるように、イラク政府と議会が無能なイスラム教徒からなる烏合の衆であるとか偏屈なセクト主義者であるというところにはない。議員たちは法案を注意深く検討し始め、その結果、この法案が、地域や派閥に関係なく、イラク民族の利益にとって恐ろしい脅威であることを理解し始めた。

これはイラクから来たもう一つのよいニュースである。市民社会や労働組合、石油の専門家、メディアは石油問題を活発に議論し、民主主義は本来このように機能すべきだという見本となるようなやり方で、自分たちの見解を議会に知らしめているのである。石油労働者組合は、指導者や組合員が逮捕される危険を冒して、ストを実行した。

これまで外から人々がイラクについて抱いていたイメージ、すなわち急激に状況が悪化し、大規模な暴力が大きな社会危機をもたらしているというイメージは間違ってはいない。けれども、そうしたイメージは、それでも「通常の生活」と「通常の政治」が可能であるという事実を覆い隠してしまう。ブッシュ政権が石油法を急いで通させたがっている主な理由は、イラクの人々がこの問題を議論し始めることを恐れていることにある。多くの人がこの法律の含意することを理解すればするほど、法案が廃案になる可能性は高くなる。イラク議会の鍵を握るいくつかの政党がこの法案に反対している。今週政府から撤退したスンニ派の政党、シーア派のサドル派、そしてファディラである。

米国政府はこの法律を「和解」に関わる問題である主張して推進している。すなわち、この法案を早く採択すれば、公正な基準に従ってイラクの民族・宗教分派にかかわらず様々なコミュニティが収入を分かち合うことができると主張しているのである。けれどもこれはイカサマにすぎない。法案にある43項目のうち収入の分配について述べているのは一項目だけであり、そこで言われているのは、別に定められる「連邦歳入法」が分配方法を定めるということだけである。しかも、「連邦歳入法」の第一草案が現れたのはようやく6月になってからで、イラク議会がこの法案を2カ月もたたずに採択すると考えるのは明らかに無理である。

米国政府と米国の石油ロビーが本当に欲しているポイントは、この法律がイラクの石油部門に外国企業が参入する条件を定めていることにある。独立系アナリストたちによると、外国の石油企業に与えられることになっている条件は、クウェートやサウジアラビアなど近隣の産油国が外国石油企業に与えている条件よりもはるかに企業側に有利なものとなっている。近隣諸国はいずれも、国家利益を守るための規定を設けている。たとえば、生産を統制する国営石油企業だとか、外国企業の最大利益を契約時に定める規定だとか、外国企業の操業を一部の油田に限る措置だとか、紛争の仲裁を国際法廷ではなく国内法廷で行う規定などである。ロシアやベネズエラのような中東以外の巨大産油国では、「戦略的な」油田をめぐる契約や共同開発計画契約については議会の承認が必要となっている。

石油産業を監視する団体「プラットフォーム」は、イラクの石油ガス法は「イラクの将来を書面により略奪しかねない」と述べている。プラットフォームの共同創設者であるグレッグ・マティットは「この法律は外国企業の自由放任を認めるものである。イラクにある未開発の油田やこれから発見されるだろう石油----1000億バレルから2000億バレルにのぼる可能性もある----がすべて外国企業のふところに入ることになる」。

人々の圧力がすでに事態を変え始めている。2006年の最初の草案では生産共有合意----1990年代初頭、ロシアが初期資本主義段階の弱い状況にあったときに外国の石油企業に対して与えた譲歩と同様のメカニズムで、すでにロシアが廃止したやり方----を提案していた。法案の最新版では、「開発リスク契約」が導入されている。けれども、いずれにせよ改訂の機会は向こう30年間ないことになっており、それは最初の草案同様にひどいものである。

イラク社会がこの問題について気付きはじめたため、イラクの石油産業技術者106人----サダム政権下で亡命していた人々も含まれている----が議会に最近手紙を送るといった重要な出来事が起き始めている。彼らは、法案の採択を急ぐ必要はまったくない、というのも、治安が改善されなければ外国からの投資はこないだろうから、と述べている。彼らは、イラク国営石油企業との契約が提案されたときに議会がそれを検討する権利を求めている。また、石油法より前に歳入分配法を採択すべきであり、順序を逆転させるべきではないと述べているが、これはブッシュも認めるべきまったく正当な見解である。

今週のキャンプ・デービッドでこの問題が持ち出されるかどうかはわからないが、英国政府のふるまいは、西側政府のほとんどと同様、好ましいものではない。米国と緊密な関係を持つバグダードの英国政府関係者は、イラク議会よりも前に石油法の草案に目を通している。英国は、IMFの主張、すなわち、イラクが石油部門への外国企業の参入を認める法律を採択しない限りサダム時代の最後の負債を免除すべきではないという主張を支持している。

ゴードン・ブラウンは、現在の国際金融制度を強硬に支持しているため、こうした不正な条件をゆるめるよう求めて圧力をかける見込みはない。これはいっそう残念なことである。というのも、占領が終わって派閥間の危機を乗り越えたときに、イラクが繁栄する最も良い方法は、自国の天然資源をイラク自らが最大限コントロールすることにあるからである。イラク人のほとんどが、2003年の侵略は主に石油を略奪しようとしてなされたと考えている。平和もまた石油にかかわっている。パニックと治安危機を、イラクの富を外国に手渡す隠れ蓑に利用すべきではないことだけは確かである。

「米国と緊密な関係を持つバグダードの英国政府関係者は、イラク議会よりも前に石油法の草案に目を通している」。あからさまに侵略者が押しつける法律です。

日本国憲法が押しつけだったと声高に騒ぐ人々が、イラク石油法の押しつけに反対している声は聞こえてきません。

投稿者:益岡
posted by 益岡 at 09:31| Comment(2) | TrackBack(1) | イラク全般 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
労働組合員であれ、国家主義者であれ、宗派主義者であれ、共産主義者であれ、旧バース党員であれ、別にどのセクトにも属さない人であれ、およそイラク人というイラク人がこの石油法に反対するのはよくわかります。
殺しを伴いながら、自分たちの財産を盗もうとされているのだから、徹底的に抵抗するでしょう。
Posted by 法案拒否は順当 at 2007年08月15日 22:15
確かにその通りですね。石油法については、大手メディアではほとんどちゃんと扱われていませんね。。。
Posted by 益岡 at 2007年08月19日 14:21
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