2007年06月17日

イラク人労働者が石油を守るためストを実行

「撤退するかわりに石油をよこせ」。ジェームズ・ベーカー率いるイラク研究委員会などは、実質上そう述べています。「殺されたくなければカネを出せ」と同じタイプの脅迫。イラクで働く人々が組合を中心に占領下で米国が進めようとしているイラク資産の略奪に抵抗しています。
イラク人労働者が石油を守るためストを実行
デービッド・ベーコン
2007年6月11日
ZNet 原文

ブッシュ政権はどこのものであれ労働組合を嫌悪しているが、イラクでは組合を嫌う特別な理由がある。占領の経済アジェンダに反対している大きな勢力が労組であり、とりわけ、アジェンダの中心にあるイラクの石油民営化に対する最大の障害となっている。同時に、戦争のさなかにそれでも毎日仕事に行かなくてはならない何百万人ものイラク人にとって、少なくとも生き延びるために必要な生活水準を維持しようと活動している唯一の勢力が労働組合なのである。

今週、飢餓ラインの収入と石油詐欺に対するイラク人の怒りが爆発した。6月4日月曜日、イラク労組の中でも最大で最も活発なイラク石油労働組合連合が、イラクの石油を公共の手から譲り渡さないよう呼びかけ、また約束した経済制作を実現するよう政府に求める期限付きストを始めたのである。イラク南部の石油採掘装置からバグダード最大の精製所に石油を運ぶパイプラインの労働者が仕事をやめた。とてもささやかな職場闘争で、イラク経済の機能に大きな影響を与えないよう配慮したものだった。

イラク首相ヌーリ・アル=マリキはそれに対して軍を出動させ、バスラ近くのシェイバでスト参加者たちを取り囲んだ。その上で彼は組合の指導者たちに逮捕状を発行した。6月6日水曜日、組合はストを6月11日まで延期した。労働争議はそのとき再開できただけでなく、石油採掘現場自体の操業停止、あるいは石油輸出の停止にさえ簡単に発展しかねなかった。それはバグダードのマリキ政権を維持している収入の流れを止めることになる。

石油労働者が要求している事項のいくつかは、占領下でイラク人労働者がおかれた絶望的な状況を反映している。労働者たちは、雇い主であるイラク石油省に対し、賃上げと約束通りの休暇、そして数千人に達する一時雇用職員の正規雇用を求めている。住宅が大規模に破壊され、少なからぬ労働者が荒廃したむき出しの状況で暮らしている国で、労働組合は政府に、家を建てるための土地を提供するよう求めている。毎年、石油研究所は奇跡のように授業を続けて技師を育てているが、戦争で破壊されたイラクの石油産業には技術労働者がどうしても必要であるにもかかわらず、石油省は卒業生に仕事を提供しようとしない。労働組合はこうした若者たちに仕事と未来を要求している。

けれども、そうした基本的要求をもしのぐ一つの要求は、イラク石油産業全体を海外企業の手に渡す石油法の再考である。そしてこの要求のために、米軍のジェット戦闘機さえもが出動し、スト参加者がデモを行っている現場上空を旋回する。イラクでは、敵意を持った軍用機が上空を旋回している事態は、地上の人々に対するただの脅迫を意味しているわけではない。こうした行為はイラクでは遙か以前から、組合活動を弾圧するためにイラク政府や占領米軍により続けられてきたのである。

イラクには労働組合活動の長い歴史がある。組合活動家は、英国とその傀儡王政のもとで禁止され投獄されながらも、労働運動を組織してきた。1958年にイラクが独立してから、それはアラブ世界の賞賛の的となった。後にサダム・フセインの弾圧により組合指導者たちは地下に潜ったが、見つけ出された人々は殺されたり投獄された。

サダム政権が崩壊してから、イラクの労働組合活動家は、労働組合運動を再建する決意で監獄を出て、地下から姿を現し、亡命生活を終えて帰国した。まるで奇跡のように、戦争と爆撃のさなかで、これらの人々は組合を再建したのである。南部の石油労働者組合は今やイラク最大の組織の一つであり、採掘施設とパイプライン、精製所に数千人の組合員を擁している。電気労働者組合は女性(ハシメヤ・ムシン・フセイン)が組合長を務める最初の全国労働組合である。

鉄道やホテル、港湾、学校、工場の労働組合とともに、これらの組合はストを行い、選挙を実施し、賃上げを勝ち取り、民主主義を日常に生かしている。それにもかかわらずブッシュ政権と傀儡のバグダード政府は団体交渉を法律で禁じ、組合の資金を押収し、イラク労働組合指導者に対する暗殺の波から目を背けている(目を背けるよりもっと悪いこともしている)。

ブッシュ米大統領は民主主義を望むと口先で言うが、イラクの人々が一致して求める政治的要求を決して認めようとしない。イラクの人々は、石油(そして発電所と港湾などの主要施設)をイラクの人々の公共の手においておきたいのである。

イラクの労働組合が最も強くこれを求めて声を上げていることから、米国はイラクの労組を忌み嫌うことになる。ブッシュ政権は民主的手続きを口先で重視すると述べながら、実際にはイラクの石油を巨大企業に売り払うことの方が遙かに重要なのである。

イラクの石油は1960年代、中東の他の国々と同様に国有化された。イラクの石油労働組合はそれ以来現在に至るまで、石油産業を最も強固に守ってきた組織だった。

2003年、占領行政当局との間で入札なしのなれ合い契約を結んだハリバートン社が米軍兵士に続いてイラクに乗り込んできた。ハリバートン社は油田と採掘施設を支配しようとして、イラク人労働者を屈服させるために再建支援金の支払いを停止した。石油労働者組合はその年の8月に3日間のストを行い、輸出を止めて政府収入を遮断した。ハリバートン社はイラクから撤退した。

石油労働者組合と港湾組合は、また、同様のなれ合い契約で乗り込んできた海外企業をイラクの深海港湾施設から撤退させた。ムシンを代表とする電気労働者組合は今も、発電所の民営化に道を開く下請け化を阻止しようと闘っている。

占領軍はつねに経済的なアジェンダを持っていた。占領当局のツァーであるポール・ブレマーは、売却する予定の公営企業の一覧リストをバグダードの新聞に発表したことがある。アラブの労働組合指導者ハセネ・ジェマムは敵意を込めて次のように語ったことがある。「戦争により民営化が楽にできる。まず社会を破壊し、それから私企業に再建させる」。

ブッシュ政権がイラクから撤退しない理由の一つは、経済アジェンダがまだ安定していないからである。米国政府の指示のもとでイラク政府は新たな石油法を人々から隠したまま立案した。石油屋のジェームズ・ベーカーが率いるイラク研究委員会はそれを占領を終わらせるための鍵と呼んだ。

米国メディアはこの法律を、石油の富を公平に分けるものだとべた褒めした。イラクの労働組合はこれを世界最大の埋蔵量を誇る油田地帯の一つにおける石油開発をこれから外国企業に支配させるものと述べている。

イラク石油労働者組合の代表を務めるハッサン・ジュマー・アワドは5月13日、米国議会に手紙を書いている。「石油法がイラクの人々のためにならないことは誰もが知っています」と彼は警告する。労働組合は秘密交渉から排除された。ジュマーによると、その結果は「ブッシュとその支持者たち、そして外国企業の利益のためにイラクの人々を犠牲にする」ものである。この法律が実施されれば組合はストに入るとジュマーは警告した。

ほかのイラク人労働組合活動家と同様、ジュマーもまた、イラクの石油を代価として要求することなしに占領を直ちに終わらせるべきであると述べる。「アメリカ合衆国は、自分たちは私たちの資源の支配者としてではなく、イラクの解放者としてイラクにいると主張しているはずです」と彼は米国議会に指摘する。米国議会で戦争に反対する勢力がイラクの人々の敬意を勝ち取ることができるとすると、それは彼ら彼女らが石油法を否認した場合のみである。

占領が終わったときにイラクの政権がどんなものであれ、破壊された国を再建するためには石油の富を手にしている必要がある。それゆえ、イラクの労働者たちには、石油を手放さないよう闘う大きな理由がある。

デービッド・ベーコンはカリフォルニア在住のフォトジャーナリストで、労働問題や移民、グローバリゼーションなどを扱っている。新著「Communities without Borders」はコーネル大学出版局/LR社から発売されたばかり。

投稿者:益岡
posted by 益岡 at 11:47| Comment(2) | TrackBack(0) | 日々のニュース系
この記事へのコメント
読みながら、この困難にも絶望しないイラク魂に感動してとめどなく涙が流れました。組合員の皆さんが無事でありますようにと祈るばかりです。
Posted by うだすみこ at 2007年06月18日 16:54
コメントありがとうございました。組合の活動関係についてはこれからも紹介していきたいと思います。
Posted by 益岡 at 2007年06月18日 21:30
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