2007年04月07日

破壊されたイラクの保健医療体制

2005年までにイラクの乳幼児死亡率を半減させる。ブッシュ米大統領はイラク侵略前にこんな公約(嘘)を語っていました。イラクの保健医療体制についてIPSのアリ・アル=ファディリーの報告。
破壊されたイラクの保健医療体制
アリ・アル=ファディリー
2007年4月6日
Electronic Iraq 原文

バグダード発、IPS。暴力を生き延びたイラク人も、病気を前に生き延びることができるかどうかについては定かではない。

「広く知られているように、中東地域でイラクの保健医療は最高でした」。ラマディ総合病院のイヤド・ムアンマドはIPSにこう語る。「最上の医師たち、病院、看護士、もっとも安価な薬。現在、状況はこの正反対になっています」。

ムハンマド博士は、医師の中には殺されたものもおり、また多くの医師が国外に逃れたと語る。患者たちも医者についていこうとしており、国外で治療を受けるためにならば財産を売り払っても良いと考える患者も多い。

「現在の状況は、経済制裁期(第一次湾岸戦争後の1990年代)よりもひどくなっています。経済制裁期には100万人以上の人が死に、治療に必要な薬も必需品もほとんどなかったのですが、それよりひどいのです」。

イラクの保健指標は1950年代以来最悪のレベルに落ち込んでいると、国連人口部門の元代表でイラク関係専門家のジョセフ・シャミーは言う。

現在病院で受けることのできる治療は極めて限られているため、治療を望むイラク人は国境を越えてシリアやヨルダンに行くことになる。それは高くつく。というのも、外国人なので、私営の病院でしか治療を受けられないからである。

イラク政府関係者は、対策が取られつつあると述べる。「新たな病院を建設する契約が多数なされたし、我が省はイラク全土で状況を調査している」とイラク保健省のアフメド・フセインはIPSに語る。「現在ある病院は古いので、新たな病院を建てた方がよい」。

けれども、保健医療に関する経験をまったく持たない政治家たちが牛耳っているイラク保健省の中では、汚職が蔓延していることが報じられている。保健省を公式に率いているのはシーア派聖職者のムクタダ・アル=サドルの運動である。

手に入る治療を誰が受けられるかは、セクト的観点から決まる。

「病院に行くと、聖職者たちの写真が至るところにあります。まるで聖廟にいるようです」とロンドンに住むシーア派のイラク人アナリスト、カシム・ブリサムは電話でIPSにこう語った。「聖職者は医者ではありません。病院を聖職者が運営すべきではありません」。

イラク人医師たちは、セクト主義の展開が、既に壊滅的な保健医療体制をさらに悪化させていることに気づいている。

「イラクの病院に関するドキュメンタリーに私は出ました。それはかつてない大失敗でした」とIPSに語るのはバグダードのラフィ・ジャシム博士である。「その夜、民兵が私の家を襲撃すると事前に知ることができたのは幸運でした。私は今、逃亡中の犯罪者同様、逃げ回っています。家族はいつ何時テロ攻撃に会うかわかりません」。

経済制裁と戦争と占領が一緒くたになって、イラクの乳幼児死亡率は世界最悪の悪化となった。ユニセフが今年発表した「世界の子どもたちの状態」という報告によると、1990年に5歳未満の子どもの死亡率が1000人あたり50人だったイラクでは、2005年に1000人あたり125人となり、年間平均6・1%上昇していることになる。

2003年、米国主導の侵略を始めたとき、ブッシュ政権は2005年までにイラクの幼児死亡率を半減させると公約した。全く逆に、死亡率は悪化し、イラク保健省の数値によると2006年には1000人あたり130人になっている。

医薬品が入手できないことが致命的な要因となっている。

「私たちはイラクに薬を輸出していましたが、保健省に薬を提供しようとしても連絡が取れません」と、医薬品の大企業を運営するハメド・アル=ヌアイミ博士はバグダードでIPSに語った。「私たちはいつもできる限り安価にヨーロッパ製の医薬品を提供しているのに、こういう状態なのです」。

アル=ヌアイミは自分の会社が競争入札では勝つ条件を提案しているのに契約できない理由については述べていない。「理由はご想像にお任せします」と彼は言う。

ファルージャ出身で55歳になるハマド・フセインは、訪問中のバグダードでIPSに、「私たちは政府からもアメリカ人からも無視されています」と語った。「よりよい生活を約束していながら、今もたらされているのは悲惨な死だけです」。

フセインはさらに続けて、「病院と診療所は麻痺しており、とても簡単な治療さえ受けられません。ですから、市場で薬を買わなくてはならないのですが、そのときには冷蔵庫やTVなどを売り払って病人を助けなければなりません」。

バグダード大学理学部で生物学を学んでいるサナー・スレイマンは、IPSに、環境の観点からイラクの保健医療問題を見ようとする人は誰一人としていないと述べる。

「劣化ウラン弾や白燐弾のような特殊兵器を含め、膨大な量の爆弾がイラクに落とされました。これにより、患者の数は劇的に増え、病気も劇的に深刻になったのです」とスレイマンは言う。「日々、事態は悪化していますが、だれも注意を払っているようには思えません」。

ファルージャの歯科医師はIPSに、高くて治療を受けられないのでイラク人のほとんどが歯の治療をしていないと語る。

「現在、イラクの人々は歯の治療を贅沢な行為だと考えています。歯痛がどうしても我慢できなくなるまで、診療所には来ないのです」と歯科医師は言う。「ほとんどの人は、きちんと詰め物をするかわりに歯を抜いてしまうよう求めてきます。ちゃんとした治療の費用は払えないからです」。

精神衛生の状況も、同様にひどい状況にある。

イラク心理学者協会(AIP)が2007年1月に発表したイラクの人々に対する戦争の心理的影響に関する報告では、イラクの18州すべてでインタビューした2000人のイラク人のうち92%が、爆発で殺されるのことを恐れていると語っている。

インタビューを受けた60%の人々が、暴力がひどいためにパニック障害を起こしており、自分が次の犠牲者になるのではないかと恐れて外出できない状態にあるという。

All rights reserved, IPS Inter Press Service( 2007) . Total or partial publication, retransmission or sale forbidden .

日本でイラクへの医療支援を行っているJIM-NET: 日本イラク医療支援ネットワークというグループがあります。ぜひ情報を参照して下さい。

新規の病院建設(箱物建設)も医薬品の輸入も、汚職と国外企業の利権の場となっています。

投稿者:益岡


posted by 益岡 at 16:12| Comment(0) | TrackBack(0) | イラク全般 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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