2007年03月12日

バグダードの米国大使館を建設するためにアジア人労働者が人身売買されている

国際法に違反したアメリカ合衆国による侵略と占領によって「解放」され「自由と民主主義」がもたらされたイラク。米国が支配するバグダードのグリーンゾーンの中で、移民労働者が奴隷状態で米国大使館建設のために働かされています。


バグダードの米国大使館を建設するためにアジア人労働者が人身売買されている
デヴィッド・フィニー
2007年3月3日
ZNet 原文

クウェートで休暇をとったあと、2005年5月にイラクに戻る途上、特徴のない白いジェット機に乗ったジョン・オーウェンは、状況がいっそうお粗末なものになったと感じ始めた。

「第一クウェート貿易&建設」----バグダードで5億9200万ドルの米国大使館の建設に従事する中心企業----に雇われたオーウェンは、空港で、新たに雇われたフィリピン人とインド人の労働者約50人に囲まれていたのを思い起こした。誰もが、バグダード行きではなくデュバイ行きのボーディング・パスを手に持っていた。

2005年11月に第一クウェートと契約してから7カ月後、彼は職を辞した。

昨2006年6月、辞職状の中で、オーウェンは第一クウェートと米国国務省に対し、オーウェンのマネージャーが建設労働者に身体的な暴力を振るい、殴っていたこと、労働者の安全をほとんど顧みなかったこと、日常的に安全をないがしろにしていたことを指摘した。

しかもこれらはすべて、米国が支配するグリーンゾーンのまさにど真ん中----2005年7月、物議を醸した大使館建設契約を密かに行った米国国務省の鼻先で行われているのである。

オーウェンはまた、低賃金で働く数千人の移民労働者が暮らす労働キャンプのひどい衛生状態、汚い生活状況、医療過誤についてもクレームを付けている。フィリピンやインド、パキスタンをはじめとする南アジアの貧しい国々からグローバル労働市場を介してリクルートされたこれらの労働者は、1日わずか10ドルから30ドルしか稼いでいない。米国の資金と契約している多くの企業と同様、第一クウェート社も、労働者の輸入を好んでいる。というのも、イラク人労働者は治安上悩みの種で、それにかかずらわる価値はないと考えているためである。

こうしたひどい状況があることを指摘する電子メールや電話が多数あるにもかかわらず、第一クウェートの総監督ワディー・アル・アブシもその弁護士アンジェラ・スタイルス----米国政府の契約方針アドバイザーの元トップだった----もそれに返答していない。1年にわたり返事を求められていたにもかかわらず、このプロジェクトを担当する米国国務省の官僚も、コメントの機会を無視するか拒絶するかしてきた。

パスポートを見せて下さい

オーウェンがバグダードでの仕事に戻った3月、米国オレゴン州マートルクリークにある自宅からクウェートに飛んだロリー・メイベリーも、同じような事態を目にすることになる。

抑揚のある話し方をする鷹揚な元軍人メイベリーは、以前、ハリバートン社や私営治安企業ダヌビアとの契約で、イラクで働いていた。冒険と、米国契約企業がイラクでちらつかせる巨額の小切手を求めて、彼はMSDSコンサルティング社と月に1万ドルの契約をせしめた。

MSDSは二人の経営者が運営するコンサルティング会社でワシントンの米国国務省のメネージャーたちが行う調達プログラムの支援をしている。この会社はこれまで医療サービスにもイラクでの仕事にもかかわったことはなかったが、第一クウェート社は、国務省で大使館プロジェクトを監督している契約担当官ジム・ゴールデンの勧めに従ってMSDS社を雇い入れた。わずか数日で、数十万ドル相当の医療ケア関係契約が成立した。

45歳のメイベリー----以前は軍で救急医療技師として働き、オレゴンで葬儀官の仕事をしていた----は、MSDSが出した募集広告に応募した。バグダードの現場で建設作業員のために医療措置を行う仕事に就く計画だった。

3月15日、第一クウェート社のバグダード行き飛行機----オーウェンとは別の便だった----に乗ったとき、メイベリーは何かよくないことがあると感じた。

メイベリーが語るところによると、彼はクウェート・シティの空港で、カウンターの中にいた人物が第一クウェート社のマネージャーに乗客名簿と封筒に入ったお金とデュバイ行きのボーディング・パスを手渡したのを見たという。マネージャーは、それを受け取ると、メイベリーと、約50人の新たに雇われた第一クウェート社の労働者----ほとんどがフィリピン人だった----にボーディング・パスを手渡した。

「誰もが、税関と治安検査を通るときに、自分たちはデュバイに行くのだと言うように命ぜられた」とメイベリーは言う。治安検査を通ったら、彼らは皆、階段を上り、マクドナルドの横で第一クウェート社のスタッフがドア----第26ゲート----の鍵を開けるのを待った。第26ゲートを出ると、印の付いていない白い52席のジェットが待っていた。「その飛行機は博物館行きのボロだった」とメイベリーは率直に砕けた調子で語っている。

「労働者全員のパスポートは第一クウェートが取り上げていた」とメイベリーは言う。また、彼自身は飛行機がバグダードに向かっていることを知っていたが、他の労働者が行き先を知らされていたかどうかは定かではないと言っている。アジア人労働者たちは、海を越えて東に向かうのではなく北に向かっているのはどうしてかと疑問を口にし始めた。メイベリーは、「彼らはデュバイで働くと思っていたのではないかと思う」と述べている。

第一クウェート社の元監督は、同社がイラクで労働者のパスポートを取り上げていたことを認めている。これは、米国の契約に違反している。

「パスポートはすべて事務所が管理していた」と社内の人物は言う。彼は、経済的・個人的報復を恐れて匿名にするよう求めた。バグダード行きの航空便なのにデュバイ行きのボーディング・パスを配ったことについては、「旅行禁止令のためだ」と彼は説明する。

フィリピンやインド、ネパールの移民労働者はとりわけ第一クウェートのような雇い主に対して弱い立場に立たされているとメイベリーは考えている。というのも、これらの国はイラクにほとんど外交使節を置いていないからである。

「パスポートもなく、自国の大使館にも行けないとすると、ひどい状況から逃れるために何ができるだろうか?」と彼は言う。「さらに、第一クウェートは米国大使館の建物を建てているのだから、米国国務省に駆け込むこともできないだろう」。

致命的な「駄菓子屋」薬

メイベリーがバグダードに来たとき、オーウェンは既に前の年の11月末から大使館建設の現場で働いていた。二人が出会うことはなかったが、二人とも、プロジェクトの管理および最大2500人に及んだ労働者に対する残虐な取り扱いに対して同じような苦情を申し立てている。労働者のほとんどはフィリピン、インド、パキスタンの出身で、エジプトやトルコの出身者もいた。

怪我をしたり病気にかかったりする労働者の数が多いことにメイベリーはショックを受けた。彼は到着後すぐ働き初め、数日間、朝から晩まで働いた。

4日後、第一クウェート社は彼に仕事を辞めさせた。メイベリーが、自分が到着する前に死亡した二人の患者の死因が医療過誤だったのではないかと疑い、調査を求めた後のことだった。メイベリーはまた、診療所が非常に不潔で管理がでたらめであるとして、診療所を閉鎖するよう勧告していた。

「医療ケアについて何のフォローアップもなかった。痛み止め漬けになってふらふらした労働者たちが傷口の開いたまま歩き回り、感染症が蔓延していた」と彼は言う。「衛生という考えはそこではばかげたもののようだった。労働者が風呂に入っていたかどうかさえわからない」。

米国国務省と米軍および第一クウェート社にも届けられた報告書の中で、メイベリーは診療所に対する心配を10以上リストしている。診療所にはお湯も消毒薬も手を洗う場所もなく、適切な装備を備えた救急車も通信機器もなかった。メイベリーはまた、労働者のカルテ管理もまったくでたらめでほとんど存在せず、ベッドは汚く、第一クウェート社が雇い入れた医療サポート・スタッフもほとんど訓練を受けていなかったと述べている。

さらに、薬の処方のやり方に彼はとりわけ思い悩んだ。イラクとクウェートから来た薬の多くはきちんと管理されておらず、混乱していてはっきりしたラベルもなかったと彼はメモに書いている。さらに医療担当者は頻繁に患者の診断を間違えたという。痛み止めの処方が「まるで駄菓子屋でお菓子を配るように出され・・・・・・それから人々は現場に追い返された」。

メイベリーは、痛み止めを処方しすぎると依存症になり、事故を起こすと注意した。「中には10メートル近い高さの足場で働いている人もいた。私は第一クウェート社に、建築機械を操縦する人や重機を扱う人に痛み止めを与えるべきではないと述べたが、彼らは『これが我々のやり方だ』と答えるだけだった」。

二人が死んだのは、いい加減な薬の処方のせいではないかとメイベリーは考えている。一人は25歳で、自室で死亡した。もう一人は30代半ばで、心不全のため診療所で死亡した。二人とも「医療殺人」かも知れないとメイベリーは言う----二人とも、でたらめに不適切な措置を受けた可能性がある、と。

国務省が調査を行っていたとしても、メイベリーはその結果を何一つしらない。プロジェクトを監視する立場の米国国務省官僚二人は、メイベリーの主張をめぐる電話での問い合わせにも電子メールにも返事をしていない。報告は無視されたかも知れないとメイベリーは言う。それは彼が批判したからではなく、彼は綴りがでたらめで、さらに彼のコンピュータに搭載されているアラビア語翻訳プログラムのために問題は大きくなったかも知れないと彼は言う。

事故は起きる

オーウェンが自分の働いた7カ月間についてしている説明も、メイベリーの説明と似通っている。健康と安全の対策は基本的に存在しなかったと彼は言う。安全対策会議が開かれたのを彼は一度として目にしていない。あるときエジプト人労働者が転落して背骨を折り、家に送り返された。彼のその後は誰も知らない。「安全プログラムがあって、落下防止ベルトを付けていたらこの事故は起こらなかったかも知れない」とオーウェンは言う。

オーウェンはまた、監督が労働者を殴るのは日常茶飯事で、労働者には作業着が一着しか支給されないので作業着を洗うこともままならないと述べる。「作業着を洗うことなど決してできなかった。作業着は汗と泥にまみれたひどい状態になった」。

彼はしばしば水を盗み出して同僚の労働者に提供していたが、医療は別の問題だった。発疹やただれを治療してもらうよう労働者に彼が言ったとき、第一クウェートのマネージャーたちは労働者を甘やかして仕事をさぼされようとしていると彼を非難したという。

プロジェクトを管理する国務省の官僚は、こうした出来事を知っていたにもかかわらず、何一つ対策を取っていなかったようだと彼は言う。あるとき、労働者17人が建築現場の壁を上って逃げ出そうとしたとき、国務省官僚はこれら労働者を狩り出す手助けをし、「実質上の監獄」に閉じこめたとオーウェンは言う。

辞任する直前の6月、パキスタン人労働者数百人がストを起こし、自分たちに嫌がらせをしていたレバノン人監督を殴った。それから375人の労働者が国に帰されたとオーウェンは推測している。

「動物のような扱い」

第一クウェート社に最近雇われた人々は、オーウェンとメイベリーが共通して述べている事態は正確であると言う。以前から働いていた監督も、労働者の50%から60%が、第一クウェート社が「人々を動物のように扱い」、また理由もなくめちゃくちゃな「給与からの天引き」を加えて約束した賃金を払わないとして、頻繁に抗議していると述べる。

別の元第一クウェート社の監督----自分に不利な事態を恐れて名前を明かさなかった----は、オーウェンとメイベリーの苦情申し立ては「氷山の一角」に過ぎないと語る。

けれども、米国の「イラク解放と占領」を象徴する最も永続するだろうモニュメントをめぐって今のところ目に見えるのはその氷山の一角だけである。現在のところ、この建設プロジェクトの壁の中に入ることができるのは、第一クウェートの労働者と契約者のほかに、認証を受けた一握りの国務省担当者と契約関係者だけである。空に向けて首を伸ばしたクレーンがそびえ立つ、不規則に広がった104エーカーの米国大使館建設現場には、ジャーナリストは誰も入れてもらえない。

この重警備もまたイカサマ芝居であると第一クウェートの元上級監督は述べる。建築現場で生活する第一クウェート社のマネージャーたちは、日常的に、グリーンゾーンの外のバグダード路上から売春婦たちを連れ込んでいると彼は言う。

売春婦たちは、スパイかも知れないと見なされているという。「彼女たちは治安にとって大きなリスクである」。

けれども、米国占領軍と第一クウェートが最も恐れる内情は、契約労働者自身、そして、イラクにおけるアメリカ合衆国の「民主主義計画」最大の象徴のために働かされる労働者が強制的に置かれている状況をきっかけに暴露されることになるかも知れない。

デヴィッド・ヒニーはワシントンDCのジャーナリスト・アナウンサーで、ロサンゼルス・タイムズ紙やニューヨーク・タイムズ紙、ABC、PBSなどで記事を発表している。メルアドはphinneydagvid(ここにatmark)yahoo.com。

ちょうど昨日(3月10日)、ニューヨーク・タイムズ紙に、米国国内につれてこられたタイ人やインドネシア人の「移民労働者」が契約に違反した不当低賃金と重労働を理由に訴えを起こしたとの記事がありました。

アメリカ合衆国が誇る自由企業は「我が国では単純労働に従事する国内人口が不足しているから訪問労働者を受け入れる必要がある」と述べ、ブッシュ政権と結託して訪問労働者受け入れ政策を促していますが(一方で移民には厳しくなっている)、訪問労働者の多くが契約違反の反奴隷的状況で低賃金・重労働を強いられており、一方で労働組合や専門家たちは、企業が単純労働の賃金を生活するに不十分なまでに抑えているから国内の人々がそうした仕事に就かないのであって、労働者不足は意図的に誇張されていると述べています。

米国による不法なイラク侵略と占領を、憲法に違反して支持し、実質上、本記事にあるようなバグダードでの奴隷労働にも暗黙の賛同を与えている日本政府もまた、日本国内で、若い人々を生存すれすれの低賃金で不安定な雇用に向けさせる政策を着々と勧めてきました。

投稿者:益岡
posted by 益岡 at 23:27| Comment(2) | TrackBack(0) | イラク全般 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
ZNETの翻訳、ありがとうございました。
クエートなど欧米メジャー企業の傀儡国家のような国に出稼ぎでフィリピンやタイから働きに出て奴隷のように売買されるケースはずいぶん前から問題になっていました。私の友人(日揮勤務、経理担当)がクエートの銀行から出てきた所を黒い車から降りてきた数人の男に拉致されそうになり、通りかかったイラク人(出稼ぎ労働者)に助けられたことがあります。メードと間違ったのでしょうか。クエート人のアジア系女性蔑視は深刻で、家族で海外赴任する国ではありません。そもそも国家的に不法労働を強制してきた米国のグローバリズムを追随しているのです。

イラクで今起こっていること、イラク人に対し行われていることは絶対に許せません。グローバリズムの犯罪です。爆弾テロによる市民虐殺とイラク難民によりバグダッドを完全に米国の支配下にしようとしています。数千年の歴史の都を征服する夢。良質の石油を支配しバグダッドにバベルの塔を築く21世紀の壮大な都市開発を行うにはイラク人の暮らしも町並みも邪魔なのです。
Posted by 宇田純子 at 2007年03月14日 09:43
コメントありがとうございます。「国家的に不法労働を強制してきた米国のグローバリズム」というのは、確かに、「グローバリズム」の一つの側面をよく表していますね。日本で今進んでいることとも、緊密に関係していると改めて感じます。
Posted by 益岡 at 2007年03月18日 14:37
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