ウォールデン・ベロ
ZNet原文
イラク:人道的介入の倒錯
米国のイラク侵略を正当化するために使われた最大の口実は、サダムが大量破壊兵器(WMD)を持っているという主張だったが、副次的だが重要な口実として、人道的理由で体制変更をするというものもあった。WMDがないことがはっきりしたとき、ブッシュ政権は遡及的に、人道的観点から侵略を正当化した。抑圧的な独裁者を排除して、民主的統治を導入すると主張したのである。
あとは歴史となった。今日のイラクは、中東産油地域を米国が地政学的に制圧するための基地となっている。イラクは米国の軍事力により据え付けられた政府を持ち、石油資源は主として西洋に奉仕している。中央政体の力が劇的に弱体化したイラクは、民族間そして宗派間の対立により分断の危機にある。原理主義が台頭し、世俗的な価値観や女性の立場は弱体化している。犯罪とテロが蔓延し、人々は大きな身の不安を感じている。
経済状況を見ると、一人当たり生産も生活水準も、侵略前よりもかなり低く、人々は慢性的な不安の中で暮らすことを強いられている。55%の人々が安全な飲み水を入手できず、100万人が食を確保できない状態にあり、公共的な食料配給に頼る人は640万人にのぼり、労働人口の18%が失業中である。
人道的介入により、かつては中東で最も発展した国だったイラクは、嘆かわしい状態へと突き落とされた。