2011年02月11日

アルカーイダ・イン・イラクの財政レコードから、ゲリラの多くが金を求めてやっているのではないことが明らかに

ファルージャ2004年4月』著者の一人、ラフール・マハジャンによる「アルカーイダ・イン・イラク」メンバーの動機と西側ジャーナリズムに関する分析。
アルカーイダ・イン・イラクの財政レコードから、ゲリラの多くが金を求めてやっているのではないことが明らかに
ラフール・マハジャン
EmpireNotes原文
2012年1月12日

つい最近、RANDが出した『アルカーイダ・イン・イラクの財政レコードに対する経済分析』というタイトルの興味深い報告書を読んだ。さほど謎とも言えない方法で、米軍は2005年から2006年の、アルカーイダ・イン・イラク (AQI)の財政レコードを入手した。報告書にも書かれているように、これにより、スディール・ベンカテッシュがシカゴの住宅開発におけるギャングの財政レコードを入手したことでヴェンカテッシュとスティーヴン・レヴィットが得た洞察と同様の洞察を得ることが可能となった。

財政レコードから、組織の規模、行動形態、メンバーの動機が明らかになる。そこから得られる自然な結論は、この問題に対する一般的な理解と、少なくとも一部、矛盾している。

2005 年6月から2006年5月まで、AQIには430万ドルの収入を得ていたが、そのうち半分は盗品販売によるもので(一般的に思われているように石油の盗掘からの収入はどうやらほとんどなかったようである)、50万ドル強はおそらくはシーア派や占領協力者(背教者として非難される)からの「略奪品」であった。「寄付」からの収入は23万3000ドルに過ぎない(「寄付」が税によるのか何らかの寄付なのか、また、寄付を得る際にどの程度の強制があるのかはわからない)。寄付は総収入の5.4%に相当する。その後、AQIは資金集めを大幅に強化し、2006年6月から12月までにやはり430万ドルの収入を得ている。このうち寄付による収入は11万4000ドル強とわずかである。

この事実から、AQIが途方もない、自滅的な残虐性を示していることが一部説明できる。ジェレミー・ワインシュタインは著書『Inside Rebellion: The Politics of Insurgent Violence』の中で、ゲリラグループが自分たちの制圧地域下にいる人々にどう接するかを決める重要な要因は、どれだけの資金をそうした人々に負っているかであると論じている。

この本はインタビューを中心としており、ヨウェリ・ムセベニ率いるウガンダの国民抵抗軍、モザンビークのRENAMO、ペルーの「輝ける道」(彼は全国区の「輝ける道」とペルーの上ワヤガ渓谷を拠点とする組織的に別の集団とを区別している)。NRAと全国区の「輝ける道」は収入のほとんどを住民からの税収に頼っており、住民に対する待遇はそれなりに良好である(「輝ける道」の方が悪い)。もちろん、これらの組織が住民に暴力を行使しないというわけではない。合法的な権力を維持するためには強制力あるいは強制力の威嚇が必要であり、国家は過去に強制力を行使してきた長い歴史に訴えることができるが、ゲリラにはそのような利点はない。

一方、よく知られているように、RENAMOは主に米国と南アフリカのアパルトヘイト政権から資金を得ていたため、支配地域の人々に対してしばしばおぞましいほどの残虐行為を加えていた。上ワヤガ渓谷の「輝ける道」は麻薬収入に依存し、やはり住民に対して残虐だった。

AQI の収入のうち、住民からの寄付が5%、その後さらに減って3%にすぎないことから、AQIはワインシュタインの分析の中でRENAMO組に属することは明らかである。「略奪品」は住民からのものもあるかもしれないが、殲滅あるいは追放の標的となった人々からのものだとすると、この分析に考慮すべきではないだろう。

ところで、主に道具的合理性の観点からなされたこの種の分析には、イデオロギーの要因が入っていない。例えば、RENAMOは、いかなる意味でも人々の利益を代表していると言える組織ではなく、通常の左派寄りレジスタンスであるFRELIMOを破壊するために外国勢力が創設したものに過ぎない。言い換えると、RENAMOはニカラグアのコントラに非常に近く、コントラが当初は反サンディニスタであると同時に反ソモサとして少なくともごく一部に受け入れられていたほどの正当性もない。イデオロギー的側面も、残虐性と関係しているかもしれない。

RENAMOと違い、AQIは当初から、そして現在も、強力なイデオロギーを維持している。けれども、そのイデオロギーが、地元の人々の利益とは何の関係もないという点ではRENAMOと似ているかもしれない。AQIの目的は国際ジハードにあり(実際、RANDの研究では、AQIはかなりの収益をパキスタンのアルカーイダに送っている)、また、どうやらできるだけ多くのシーア派を殺すことにあるようである。スンニ派の利益を追求するという目的で、彼らは現世で得られる利益よりも殉教に価値を置く。

しかしながら、西側のメディアや軍事アナリストたちがよく言うように、メンバーが私利私欲からAQIに参加しているというのはまったくの間違いである。米国の中ではイラクとアフガニスタンのゲリラについて誰よりもよく知っていると思われるニール・ローゼンは、最近のインタビューでこうした考えを強く批判している:

米軍兵士たちが、まるで「哀愁のマフィア」のように、兵士たちはその喩えを好んで口に出しますが、人々が占領に抵抗して戦う大きな理由は金であり、本当の理由つまり尊厳や自由、愛国心、イデオロギーなどではないなどと言うのをしょっちゅう耳にします。アメリカ人には尊厳や自由といった概念がわからないかのようです。タリバンが1日10ドルのために戦っていると思っているのでしょうか。けれども、ソマリアのアル=シャバブもそうですし、イエメンでも、レバノンでも、アフガニスタンでも、イラクでも、金のために戦っている人々などを見たことはありません。コミュニティのために闘っているのです。

既に言ったように、AQIについては、コミュニティのために闘っているとは思えない。ローゼンの趣旨も恐らくそういうことではないだろう。たぶん、彼が会ったゲリラの多くが、全員でないにしても、自分たちが戦っている理由をそのように考えているということだと思う。

AQI の財政レコードによると、支出のうち軍事費は10%に過ぎず、「人件費と医療費」を考えてもさらに5%上乗せされるに過ぎない。この理由の一つは、メンバーに払う賃金が驚くほど少ないことによるようである(医療手当てもそれほどよいものではないと思われる)。2006年において、メンバー1人が受け取る賃金は1カ月6万ディナーレで、被扶養者1人につき3万ディナーレが加算される。ドルに換算すると、1カ月41ドルで、被扶養者1人あたりそれに加えて 20ドル程度である。この数値をアンバル州で行われたいくつかの世帯調査結果と比較した上で、RANDの研究者たちは、AQIがメンバーに提供している報酬は、アンバル州全体の平均の半分以下であり、世帯当たり報酬はアンバル州平均の約4分の1に過ぎないと結論している(どうやらAQIメンバーの世帯員数はかなり多いらしい)。

RANDの研究者たちが指摘するように、AQIのメンバーが暴力的な死を迎える可能性ははるかに高いにもかかわらず(イラクボディカウントのデータを使って、彼らは、AQIのメンバーが暴力的な死を迎える可能性はアンバル州における18歳から48歳の男性と比べて48倍にのぼると推定している)、そうした状況なのである。ベンカテッシュが平均的なギャングの構成員(最低賃金しか得ていない)について述べたように、AQIのメンバーも金のためにやっているわけではない。AQIの場合、明らかに、メンバーになる主な理由はイデオロギー的なものであると思われる。そして、こうした人々が真の信仰を持っているかどうかもよくわからない。AQIメンバーのイデオロギーは、イスラム教神学の教えをあまり受けていない人々の極端な解釈であり、恐るべき規模の暴力に訴えたり暴力を経験したりした自分たちの個人的な経験から導かれたもののようである。

どうであれ、AQIの資金収集活動は、メンバーの私服を肥やすためにではなく(指導陣 の経済状況は不明であるが)、組織を維持し戦闘を続けるために行われていることは否定しようもないほど明らかである。その一方で、西側のジャーナリストたちや軍事アナリストにとってこの単純明解な事実を理解するのがどうしてこれほどまでに困難であるのか、その理由はまるではっきりしない。結局のところ、米兵については誰一人、主に金のために戦っているなどとは言わないのに(恐らく米兵を怒らせたいなら、お前は傭兵だと仄めかすのがもっとも簡単だろう)。

この結論がどれだけ一般化できるかははっきりしない。報告書によると、この時期、AQIはアンバル州で支配的なゲリラだったとしているが、私自身はアンサル=アル=スンナもかなり活動的だったと記憶している。暴力が頂点にあった頃のシーア派ギャングには別の理由があったかもしれないが、その記録を見ないとはっきりしたことは言えない。私自身は、アフガニスタンの新タリバン・メンバーも、アフガニスタン軍や警察の数倍の報酬をタリバンから受け取っているとの報告があるとはいえ、AQIメンバーと同様、金のために参加しているのではないと考えている。

いずれにせよ、人々がゲリラについてあまりに馬鹿げたことを言わなければよいのだが、とはいえ、これからも馬鹿げた見解を耳にしそうである。

投稿者:益岡
posted by 益岡 at 10:46| Comment(0) | TrackBack(0) | イラク全般 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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