2010年03月23日

新たな「忘れられた」戦争

米国による不法な侵略で始まったイラク占領は、まるでそんなことなどなかったかのような報道(の不在)にもかかわらず、まだ続いています。
新たな「忘れられた」戦争
ダール・ジャマイルC
DahrJamailIraq.com原文
2010年3月15日
エクストラ! (FAIR機関紙)

イラク占領はメディアの影に隠れた

「13年にわたる経済制裁とそれに続く7年間の占領によりイラクとイラク人を虐殺してきた西洋世界は、今になって犠牲者に背を向けている。わずかにイラクに残ったものは依然として爆撃と暗殺、汚職、何百万人もの立ち退き、インフラの継続的破壊により踏み荒らされている。それにもかかわらず、これらすべてを引き起こした西洋世界は、イラクの状況をバラ色に描き出そうとしている」。

マッキ・アル=ナザール、イラク政治アナリスト


オバマ大統領がこの数カ月のうちに大規模な戦闘激化を二度にわたって発表したため米国の企業メディアでアフガニスタンが注目を浴びる中、米国によるイラク占領はメディアでは扱われなくなっている。

しかしながら、米軍はわずかずつイラクから撤退しているものの、今でも13万人の米軍兵士と11万4000人の私企業契約要員がイラクに駐留しており(議会調査部、2009年12月14日)、バチカン市国規模の大使館を維持している。平均的な月にはイラク人民間人400人が命を失い(イラクボディカウント、2009年12月31日)、一部の推定では100万人以上のイラク人死者をもたらした(エクストラ!、2008年1月2日)この占領によりイラクの人々が被っている大きな影響が米国のメディアで扱われることはない。

イラク占領が始まった当初から、占領の終結と絶望的なまでの安全の必要性を除けば、イラク人にとって最大の心配事は基本インフラだった。占領から6年半を経た時点でイラクの平均的な家に電気が通る時間は一日6時間未満である(AP通信、 2009年9月7日)。ガーディアン紙は「イラクに文明が始まって以来最も深刻な水不足によりイラク南部の2万人が電力なしで、またほぼ同数が飲み水なしで放置される危機に置かれている」と報じており(2009年8月26日)、水系感染症や赤痢は蔓延している。電力と安全な飲料水の不足から、イラクの人々はバグダードの路上に出て「石油と二つの大河の国で水も電気もない」と唱え行進した(AP通信、2009年10月11日)。

占領がもたらした破壊と、イラクの破壊されたインフラを再建するための契約を得た西洋企業に蔓延する汚職とが、こうした状況を引き起こした元凶である(インターナショナル・ヘラルド・トリビューン紙、2009年7月6日)。イラクのアリ・ガリブ・ババン計画相は昨年(インターナショナル・ヘラルド・トリビューン紙、2009年11月21日)、イラクで米国が再建契約と称するものにつぎ込んだ数十億ドルはまったく目に見える効果を出していないと述べた。「予算は使ったのかもしれないが、イラクの人々にはその結果は感じられない」と彼は言う。

昨年1月、ロサンゼルス・タイムズ紙はイラクの電力不足に焦点を合わせた記事を掲載した(2009年1月26日)。小見出しには「選挙が近づく中、電気もない状況で指導者を信頼するのは難しい」とあった。けれどもほとんどすべての米国の新聞はこうした話題を避けている。例外は、問題の責任はイラク人にあると非難する記事の場合で、例えばニューヨーク・タイムズ紙は「イラクが再建計画を守らないことを米国は憂慮」という記事を掲載している(2009年11月21日)。

すでに4年になろうとする干魃がイラクの大部分を襲っているため、状況はさらに困難になっている。イラク北部では2005年以来、水不足のために10万人以上の住民が家を捨てることを余儀なくされ、さらに3万6000人が家を捨てる寸前の状況にある(AP通信、2009年10月13日)。

今も続くイラクの難民危機----国連の推定では総計で450万人以上のイラク人家を追われた(UNHCR.org、2009年1月)----をめぐる報道も、依然としてわずかしかない。記事が出たとしても、新聞の地元にいるイラク人難民を扱うものが多い(例えばシカゴ・トリビューン紙、2009年10月25日)。

イラクに残る人々にとって、もう一つの大問題は癌である。2003年のイラク侵略の際、米英軍は1700トン以上の劣化ウランを使った(Jane's Defence News、2004年4月2日)。その前に、1991年の湾岸戦争では320トンの劣化ウランを使っていた(インタープレス・サービス、2003年3月 25日)。私がイラクにいて報道を続けていた9カ月の間に話をしたイラク人は文字通り一人残らず全員、周りで癌にかかったか癌で死んだ人を知っていた。

ジャラル・ガジによるニュー・アメリカ・メディアの記事(2010年1月6日)の冒頭段落はぶっきらぼうにあからさまである:

石油や占領、テロ、さらにアルカーイダさえ、どうでもよい。イラクの人々にとってこのところ最大の現実的危機は癌である。イラクでは癌が山火事のように猛威をふるっている。欠損を持って生まれる子どもたちが何千人といる。特に米英の爆撃がひどかった都市で顕著に見られる癌と先天性欠損症の増加に、医者たちは必死で対処している。


ガジによると、2004年に米軍の大規模な攻撃作戦の標的とされたファルージャでは、重大な身体的異常を伴う新生児の比率は25パーセントにのぼるという。バグダード南のバビルでも、癌の発生は2004年の500例から2009年の9000例に跳ね上がった。バスラの腫瘍学センター所長ジャワッド・アル=アリ博士は、2005年全体で癌の症例は1885件だったが、現在では毎月1250人から 1500人の患者がセンターに来るとアルジャジーラ英語版に語っている(2009年10月12日)。

1991年の戦争に参加した退役米軍兵士の子どもたちもイラクの子どもととても似通った先天性欠損症の症状を示しており(サンデーヘラルド、2003年3月30日)、第2湾岸戦争症候群を語る米軍兵士は多い。イラクで劣化ウランに晒されたために癌になったと言うのである(ニュー・アメリカ・メディア、2010年1月6日)。

企業メディアはこうした話をどのように扱っているだろうか? 少なくとも過去5年はまったく扱っていない。例外は『ヴァニティー・フェア』の1記事(2005年2月)とAP通信の散発的な記事、例えば「病気になった退役軍人が原因を劣化ウランと語る」(2006年8月13日)だけである。『中東事情に関するワシントン・レポート』(2005年11月)やパブリック・レコード(2009年10月 19日)など小さなメディアは関連記事を掲載しているが、大手メディアはこの問題にまったく触れない。

米国の新聞はイラクの選挙に向けての状況を忙しく報じているが、ヌーリ・アル=マリキ首相の政府がイラクのスンニ派居住地域を中心に大量逮捕作戦を進めていることについては実質上まったく触れていない。イラクの日刊紙アザマンが報じているように(2010年1月4日):

イラク治安部隊はスンニ派ムスリムが多数を閉めるバグダードの市区およびバグダード北部と西部の都市町村で大規模な作戦を開始した・・・・・・。この作戦はここ数年で政府が行ったものの中で最大のもので、人々はクルド人が住む北部に脱出している。


拘束された人々の家族は、愛する人々がどこに拘留されているか教えられず、選挙が終わるまで拘留は続くと告げられるだけである。これらの掃討作戦により狩り出されているのは、かつて米国の支援を受けていた覚醒評議会----占領軍に対する攻撃を止めさせるために米国が資金を提供したスンニ派民兵----のメンバーたちである。覚醒評議会に対する支援を米国が打ち切ったこともまた、大手メディアでは報じられない。

こうしている間も、イラクの人々が直面する困難は衰えを知らない。占領の状況----イラクが米国メディアの見出しを飾っていた2004年と同じくらい多くの兵士が依然として関与し続けているこの占領(議会調査部、2009年7月2 日)----に関する正確な情報----あるいは何であれとにかく情報----を仕入れるための代替情報源を見つけ出す必要性も、やはり依然として高い。

ダール・ジャマイルは6年以上にわたり米国のイラク占領を報じてきた独立ジャーナリスト。最近の著書に『The Will to Resist: Soldiers Who Refuse to Fight in Iraq and Afganistan』がある。

投稿者:益岡


posted by 益岡 at 22:05| Comment(0) | TrackBack(0) | イラク全般 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
コメントを書く
お名前: [必須入力]

メールアドレス:

ホームページアドレス:

コメント: [必須入力]

認証コード: [必須入力]


※画像の中の文字を半角で入力してください。

この記事へのトラックバック

広告


この広告は60日以上更新がないブログに表示がされております。

以下のいずれかの方法で非表示にすることが可能です。

・記事の投稿、編集をおこなう
・マイブログの【設定】 > 【広告設定】 より、「60日間更新が無い場合」 の 「広告を表示しない」にチェックを入れて保存する。


×

この広告は180日以上新しい記事の投稿がないブログに表示されております。