2010年03月04日

優柔不断の帰結:イラクの状況は後退

イラクを不法に侵略し、占領下で膨大な殺人や拷問を実行してきたにもかかわらず、米日のメディアでは米軍があたかもイラクの「治安維持」にあたっているかのような前提で話が進む米軍の撤退について。
優柔不断の帰結:イラクの状況は後退
ライード・ジャラル&エリック・リーバー
カウンターパンチ原文
2010年3月3日

先週、オバマ大統領政権で抑えが利かなくなっている米軍高級将校が今一度、大統領の政策に反する声明を発表した。今回その声明を出したのはイラク駐留米軍の最高司令官レイ・オディエノ将軍で、2010年8月の期限以降も、イラクの北部に戦闘部隊を維持するよう公式に求めたのである。

イラクで全国選挙が行われようとしているわずか2週間前にこのような考えが伝わることは、イラクの民主主義にとっても、イラクの米軍兵士にとっても、さらには今後の米=イラク関係にとっても危険である。

ペンタゴン・スクランブル

兵士が歩調を乱したことに即座に対応して、ロバート・ゲーツ国防長官は、予定されている撤退の延期を検討するにあたっては、イラクの治安状況が「極めて著しく」悪化していることが条件となると述べた。けれども、既に悪影響は広まっていた。駐留延長を支持する輩はメディアでそれを繰り返した。新アメリカ治安センターのトマス・リックスはニューヨーク・タイムズ紙に一つ、フォーリン・ポリシーにもう一つ論説を発表し、今年予定されている戦闘部隊の撤退を遅らせるとともに2011年末に予定されている米軍の完全撤退を撤回するようオバマに提言した。リックスは、オディエルノのリークを報じながら、おおやけに、米国は4年後にも3万人近くの兵士をイラク現地に駐留させていることに賭けると述べた。ありえない政策の立て方である。リックスがフォーリン・ポリシーに寄稿した論説はさらに進んで、オディエルノが「最近ワシントンで大統領と会談した際、この問題を持ち出したところ、大統領は優雅にうなずいた」とまで書いている。

オバマはこれまで一貫して、戦闘部隊をイラクから撤退させる8月31日という期限を遵守すると語ってきた。選挙遊説の際に何十回となくこの点を繰り返してきたばかりでなく、昨年キャンプ・レジューンでも明言したし、カイロで行った演説でもこれを繰り返した。バイデン副大統領もこの政策を公言し、2月には「夏が終わるまでには米軍兵士9万人が凱旋帰国する姿を目にすることになるだろう」と述べていた。さらについ先週も、ホワイトハウスは8月31日に「イラク自由」作戦を終結させる意図を明言したばかりなのである。

議会もまた、2010会計年度の国防経費と国防権限委任法の中に戦闘部隊の撤退期限を認識しそれを支持する明確な文言を含めることで、大統領の政策を支持した。先月、米国下院外交委員会委員長を含む28人の議員がオバマ大統領に手紙を送り、現場の状況いかんにかかわらず、8月31日までに戦闘部隊を撤退させるという計画を遵守するよう求めた。

イラクの憤慨

ホワイトハウスと米国議会が撤退を保証するメッセージを一貫して出しつづけてきた中で出されたオディエルノの発言によりイラクではオバマ大統領の信憑性が傷つき、2008年にオバマが大統領に選出されてから始めてイラク国内でオバマに対する大きな批判の声が沸き起こった。

イラクのメディアは、米国が占領を延長する可能性を非難する政治声明や分析、プレスリリースで溢れかえった。スンニ派のイラク国民連合に属するオマル・アル=ジュブーリ議員は、撤退計画の変更は受け入れられないとして、ニナ通信社に対し「イラクの行政状況と治安状況に問題はあるものの」、その悪化は「米軍の責任である」と語っている。アル=サバー新聞が報じた別の声明では、イラク統一同盟のシーア派議員ジャマル・ジャーファーが、米軍の駐留を延長するとイラク人の間の「緊張はさらに高まる」と語った。ジャーファーは、また、「二国間治安協定で定められた撤退期限以降にただ一人でも兵士を残留させる」場合には「イラク政府の承認を得ること」が必要であると述べている。

議会防衛委員会委員長のアブドゥル=カリム・アッ=サメラエ議員は撤退計画変更の試みを批判し、二国間治安協定に対する国民投票を再び求めた。国民投票を行えば合意が撤廃される可能性があり、それにより米国はより早期に撤退するか、あるいは国際的な法的措置なしにイラクに兵士を置いておくことになる可能性がある。

優柔不断の帰結

オバマが米軍の撤退期限に関して態度を変えるならば、米国にもイラクにも重大な影響を及ぼすことになる。米国の世界的イメージはさらに失墜し、オバマの信憑性は疑わしくなり、米国政府は昨年の選挙で手にしたほんのわずかな政治的資本を失うことになる。

しかしながら、撤退の約束を破ることでもっとも重大な被害を被るのはイラクである。ブッシュ政権は状況依存の撤退計画を採用した。「イラク人が立ち上がれば我々は身を引く」という呪文が使われた。けれどもこうした「状況依存」の撤退計画により状況はさらに悪化させられ、軍事占領が延長される状況が続いた。

残念ながら、イラク内外に米軍のイラク占領継続を支持する少なからぬ勢力が存在する。イラクの支配諸政党や米国の軍産複合体などからなるこうした勢力は、占領が自分たちの利益を促すと信じている。アルカーイダのような別の勢力は、イラク紛争に米国を引き止めることで、膨大な人的予算的犠牲を強い、世界的評価を失墜させることで、米国を機能不全に追い込みたいと考えている。また、イランをはじめとする地域の勢力は、団結した強力な独立イラクが再び出現することを恐れている。

オバマの現在の計画は二つの時限に基づいており、状況に依存した撤退の陥穽を免れている。 2010年8月31に戦闘部隊を撤退させるというオバマの計画および2011年12月31日までに全部隊と傭兵を撤退させるというブッシュの二国間協定により、軍事と経済、政治と治安の責任は全面的にイラク人に依存することになる。

リックスが主張するように米軍のイラク占領さらに何年も続けたり、オディエルノが示唆するように戦闘部隊の撤退を遅らせれば、米国はさらに何千億ドルもの予算を無駄にするし、さらに数えきれない数の米軍兵士とイラク人民間人を死に追いやることになる。また、極めて重要なことだが、それによりイラクという国が安定と繁栄を手にすることは決してない。

3月7日のイラク選挙が終わったら、米国大統領は米=イラク間の撤退合意を再確認し、戦争を自分の手中で動かそうとしている軍当局者にはっきりとした警告を与えなくてはならない。

ライード・ジャラルは「ピース・アクション」の中東担当上級フェロー。

エリック・リーバーは政策研究所の研究員。

本記事は最初、「フォーリン・ポリシー・イン・フォーカス」に掲載された。

【イラクを不法に侵略し不法に占領し、拷問や殺害、拘留や虐待をずっと続けてきた米軍が「イラクの治安を守る」存在というプロパガンダがメディアの前提となったことが、あらゆる議論を混乱させています】

投稿者:益岡


posted by 益岡 at 22:37| Comment(0) | TrackBack(0) | イラク全般 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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