ブラックウォーターは今もイラクで武装している
ジェレミー・スケーヒル
ZNet原文
2009年8月19日
今年初めの頃に、イラク政府がブラックウォーター社の操業ライセンスを取り消したと発表したにもかかわらず、米国国務省は今もイラクにいるブラックウォーターの工作員が武装し続けることを許容している。ある国務省官僚が『ネーション』紙に語ったところによると、ブラックウォーター(最近Xeサービスと名前を変えた)は現在、「USトレーニング・センター」の名で活動しており、少なくとも9月3日まで武装したままイラクに居つづけるという。すなわち、ブラックウォターの工作員がバグダードのニソール広場でイラク人市民17人を殺してからさらに2年近くもブラックウォーターはイラクに居座っていることになる。
国務省外交安全担当官は、匿名を条件に、「その任務のもとで権限を受けたスタッフはそのときまで武器の携行を許される」と述べた。彼は続けて次のようにも言う。「米国国務省が契約している民間軍事会社の目的と使命は、米国外交官と外交施設の保護に限定されており、防衛的な性格のものである」。
最後の点は、イラク人にとっては何の安心にもならない。2007年9月16日にニソール広場でイラク人を虐殺したブラックウォーターの工作員たちは、まさに防衛的な任務に就いていると説明されていたのである。「イラクの人々は、ブラックウォーターはもはやイラクで活動していないと思っています。イラクから追放され、ライセンスも剥奪されたと思っているのです」。米国フレンド派奉仕事業委員会のイラク顧問を務めるライード・ジャラルはこう語る。「人々は、もうブラックウォーターは撤退したと思っています。ブラックウォーターが今もイラクにいるというのはとても不穏なことです」。
ブラックウォーターが依然として武装したままイラクに居座っていることを国務省が認めたのは、ブラックウォーターの元職員が宣誓証言の中で、ブラックウォーター社の社主エリック・プリンスが自分の会社は世界からムスリムとイスラムを「抹殺する」ためのキリスト教十字軍の戦いを進めることにあり、ブラックウォーター社は「イラク人の生活を破壊することを推奨しそれに報奨を出した」と述べてから一週間後のことだった。
米国国務省によると、イラクの外交安全関係契約でブラックウォーター社が今も維持しているのは航空関係契約だけだという。『ネーション』紙が最近報じたように、オバマ政権は7月31日にその契約を延長し、ブラックウォーターはさらに2000万ドルの追加支払いを受けることになった。これによりイラクの「航空サービス」で国務省からブラックウォーターが受け取る支払い総額は1億8700万ドルになった。ブラックウォーター社はこれまで「外交安全」契約で国務省から10億ドル以上の支払いを受けている。9月に、ブラックウォーターの航空契約は巨大な著名傭兵企業ディンコープが引き継ぐ予定で、イラクでの「防衛的治安」のおいしい取り分はトリプル・キャノピーが持っていく予定である。
今年1月28日、イラク政府はブラックウォーターにイラクでの操業ライセンスを与えないと発表した。イラク政府は、米軍地位協定で示されたように、民間軍事会社が公式にイラク法の司法管轄下に入ったあかつきにはブラックウォーター社はイラクを撤退しなくてはならないと述べていた。「ライセンスを持たないブラックウォーター等の会社はイラクから即座に撤退しなくてはならない」とイラク内務省報道官アブドゥル=カリム・カラフ少将は断言した。そうした宣言にもかかわらず、ブラックウォーターはイラクに居座った。「操業ライセンスなしでどうして7カ月も居座ることが認められたのでしょうか?」とジャラルは問う。
2009年1月1日に発行した米軍地位協定の文言によると、技術的には米国国務省の契約下にある企業はイラク法の管轄下に置かれるが、実質上、ブラックウォーターやトリプル・キャノピー、ディンコープなどといった国務省契約企業をイラク法の適用例外としているようである。ブラックォーターがイラクに居座り続けていることがそれに関係しているかどうかは明らかではない。ヌーリ・アル=マリキ首相をはじめとする政府高官は「ニソール広場虐殺のあとリップサービスを振りまき、ブラックウォーターを起訴しイラクでの操業を禁止すると約束したが、実際には何一つしませんでした」とジャラルは言う。「国務省の説明責任もブラックウォーターの説明責任も問わないまま、意図的に人々を騙していたようです」。
ニソール広場虐殺の一週間後、マリキ政府はブラックウォーターを禁止すると述べた。「イラク政府は市民に対して責任を追っている。軍事企業が殺人を犯すことは認められない」。2007年9月23日、マリキはこう述べた。「イラクの主権に対する重大な挑戦だ」(イラク政府は見解を求められたが、返答しなかった)。
この間、ブラックウォーターはアフガニスタンでも大規模な駐留を続けている。同社はアフガニスタンでも国務省の全世界人員保護プログラムの外交安全契約のもと、「USトレーニング・センター」という名を掲げて活動している。同社はまた、プリンスが所有するもう一つの会社パラヴァントLLCの名で米国国防省との契約のもとでも操業している。パラヴァントの工作員4人が現在、5月にアフガニスタン人市民2人を射殺したことで、米軍の調査を受けている。
ブラックウォーターは、戦争産業にとって新たな金脈となりつつあるアフガニスタンでさらなる契約への入札を行っている。米国政府に雇われて、今や7万人近い契約要員がアフガニスタンに派遣されており、アフガニスタンには米軍兵士(4万8000人)よりも契約要員のほうが多い。アフガニスタン内務省は40近い民間軍事企業にライセンスを与えているが、これらの企業はアフガニスタンで合わせて2万3000人を雇用している。これらの企業はまた、アフガニスタンで1万7000の武器を扱っている。国務省に雇われた傭兵の他に、米国国防省も約4300人の傭兵をアフガニスタンで雇っており、その数は着実に増えている。2009年第二四半期に、オバマ政権はアフガニスタンの武装民間契約要員を29パーセント増やした。
「Bleeding Afganistan: Washington, Warloads and the Propaganda of Silence」の著者ソナリ・コルハトカルは、「このような事態になっていることには驚いていません」と話す。「オバマが大統領になる前、アフガニスタンが戦争のトップ・プライオリティになるだろうとの警告は得ていたので、米国政府が戦争機械の多くをアフガニスタンにつぎ込むことは予想できました」。ブラックウォーターについて彼女は次のように言った。「イラクでと同じようにアフガニスタンでも民間人を殺しつづけるならば、米国のアフガニスタン占領に対するレジスタンスをますます強硬なものにするでしょう」。
8月6日、米国のジャン・シャコースキー議員は国務長官ヒラリー・クリントンと国防長官ロバート・ゲーズに手紙を書き、ブラックウォーター社が行ってきた「虐待の歴史」に言及し、クリントンとゲーツに「Xe社および関連会社とこれ以上契約しないこと、同社の既往契約をすべて再検討すること」を要求した。国務省も国防省もシャコースキーの手紙に返答していない。
投稿者:益岡
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