米=イラク戦略枠組み合意とそれが滞っている真の理由
2008年10月23日
ムニール・チャラビ
ZNet原文(一部)
1. 米軍兵士のイラクからの完全撤退について期限は設定されていない。
米軍兵士の全面撤退についても、イラクで米軍が設置した陸軍・空軍基地の閉鎖についても決まった期限を合意に盛り込む計画はない。
8月草稿の第26条は、2009年6月30日までに、イラク諸都市の路上から米軍を撤退する見込みに言及しているだけである。同条は、また、米軍戦闘部隊(のみ)の撤退の可能性を、期限を定めずに述べている。一応、イラク首相をはじめとするイラク政府高官がこれまでテレビで何度か述べたところによると、2011年の末あたりだろうと思われる。
けれども、米軍兵士すべての全面撤退、そして米国が過去5年間に建設してきた5つの巨大空軍基地を含む米軍基地すべての閉鎖の期限については何の言及もない。このことは、米国政府が、ここ当分の間はイラクから兵士をすべて撤退させる意図も米軍基地を閉鎖する意図もないことをあからさまに示している。
2. イラク領空の支配
第9条4項は、今後無際限の期間にわたり、米軍がイラク領空を全面的に支配する可能性が高いことを明らかにしている。9条2項や9条5項などは、イラク政府が米国の軍用航空機および民間航空機に対してまったく何の権限も有しないことを述べている。
3. 米軍のイラクにおける軍事作戦
8月草稿の第4条は、米軍が将来にわたってイラクで軍事作戦に関与する意図を持っていることを詳しく述べている。この作戦は、国内の脅威に対してのみでなく、外国からの脅威に対しても行われることを、同条の前半部分は述べている。
それに加えて、第4条第1項は、イラク政府が当然、治安を維持するためのあらゆる軍事作戦に米軍の参加を依頼することを前提としている。
しかしながら、将来にわたって米軍が勝手気ままに軍事作戦を行い、イラク人民間人を殺しても責任を追わないことについては、第4条5項がもっともあからさまに示している。同項は、次のように述べている:「本合意は、双方の自衛権をいささかも制限するものではない」。
米軍がこの5年半にわたって直接行ってきた軍事作戦により、罪のないイラク人市民が何万人も命を落としたが、米軍によるこうした殺害の大多数は、「自衛権」の名のもとに隠蔽されてきた。
4. イラク駐留米軍と米国籍民間人に対する司法管轄権
第12条第1項は、「米国は、関係する施設および合意された地区の内外で、米軍兵士および米国人文民に対する司法管轄権を占有する」と述べる。さらに、第12条第6項には、「イラク当局に逮捕された米軍兵士および米国人文民はすべて、直ちに米軍当局に引き渡さなくてはならない」とある[注:英訳では「文民軍要員」となっているが、アラビア語は文民一般を指している]。
草案から、イラク側がこれらの問題をめぐってまだ合意していないことが伺えるが、イラク政府が求める変更は些細なものである。上記の二つの項はともに、米軍兵士と米国人文民に対して米国が司法管轄権を占有すること、そして米軍兵士および米国人文民に対してイラクは全く管轄権を持たないこと、米軍兵士・米国人文民にはイラクの法は適用されないことを、疑う余地なく示している。
5. 米軍兵士が殺したイラク人文民に対する賠償請求
第21条第1項には以下のようにある。「契約に関わる損害を例外として、双方ともに、財産の損害や喪失、破戒に対する賠償を請求する権利および軍人あるいは文民の怪我や死に対する賠償を要求する権利を、公式任務の際に発生したものについては、放棄する」。
これほどあからさまな文言はない。米軍の軍事作戦により何万人というイラク人文民が殺されたとしても、イラク政府は犠牲者のために賠償を請求することがまったくできないのである。
6. 米軍によるイラク人文民の拘束
これを扱っているのは第22条である。過去何カ月かの間にいくつかの信頼できる国際紙に掲載された情報と見比べてみると、この点についてイラク側は米国の立場を一部譲歩させることに成功したようである。
それにもかかわらず、合意のもとで、米軍は依然として誰であれイラク人文民を少なくとも24時間----それ以上でないにしても----尋問し続けることができる。このことは第22条第2項に述べられている。「米軍に拘束されたあらゆる個人は、24時間以内にイラク当局に引き渡されるべく準備されなくてはならない」。イラク人文民が米国の尋問官への協力を拒否したときに、この「準備」に5年あるいはそれ以上かかるということが充分起こり得る。実際、過去5年の米軍占領下で、こうしたことが何度も何度も起きた。その可能性がないなら、どうしてわざわざ「準備する」という言葉を条項に挿入する必要があるだろうか?
7. 米軍兵士および米国人文民の、あらゆるイラク政府による統制からの免除
第14条により、米軍兵士と米国人文民は、「イラク出入国関連法」のすべての適用から除外される。そのため、イラクの公式国境のどこでであれ、国境警備員が彼らを捜査することはできないし、米国の身分証明書がある限り、出入国を拒否することもできない。これにより、アフガニスタンで作戦行動に従事する米軍兵士が麻薬の密輸をするにあたり、イラクがその温床になるだろう。
第15条と16条は、米軍兵士と契約要員に、無関税検査なしで外国製品をイラクに輸入したりイラク製品を輸出することを認めている。米軍兵士および文民契約要員が、米国国境を越えて出入国するにあたり同様の特権を認められていないことは確実である。
8. 米軍要員に対するイラクの管轄権
以前の草稿およびこの数カ月に国際紙数紙が報じてきた内容と比べると、8月草稿はこの点について米国の立場を変えさせることにイラク政府が成功したことを示している。
8月草稿の第12条3項には、「イラクは、米軍契約企業とその要員がイラク法を犯した際には管轄権を有する」とある。
投稿者:益岡





