イラク人ジャーナリストを狙った新たな暴力の波
シャウカト・アル=バヤティ
Electronic Iraq
2008年10月18日
Electronic Iraq 原文
バグダード発。イラク人ジャーナリストはここ数週間、新たな暴力の波に教われている。これは、イラクの自由なメディアを攻撃する新たな企ての一つではないかと考えられている。
先月以来、のメディア関係で働く少なくとも5人が殺され、数人が負傷した。
ニューヨークに本部を置く「ジャーナリスト保護委員会」(CPJ)によると、今週のはじめには、クルド人ジャーナリストのディヤル・アバス・アフメド、イラク北部キルクークの路上で銃殺された。
9月13日には、モスルでショーを撮影していた記者3人と運転手が殺されている。
アル=シャルキヤ・テレビの上級特派員マフムード・アル=エザウィとカメラマンアフメド・サリム、イハブ・ムッド、そして運転手のカイダル・スレイマンは、他のクルー・メンバーが撮影のためある建物の中にいる間に誘拐されたという。
遺体は、のちになって、誘拐現場に近いアル=ボルサで見つかった。
9月20日、イラク人ジャーナリスト組合の委員長ムアイド・アル=ラミが負傷した。バグダードの組合本部で起きたこの爆発事故では、他に4人のジャーナリストも負傷している。
報道によると、爆発が起きたのは、首都バグダード北部にあるアル=ワジリヤ地区の組合建物入り口付近だった。
この攻撃後、「ジャーナリスト保護イラク委員会」(ICPJ)は当局に、ジャーナリスト組合の組合員の安全確保をさらに改善するよう要求した。同組合によると、組合員は、自由な報道とメディアの声を黙らせようとする過激派の標的とされているという。
一方、「イラク・ジャーナリストの権利協会」の会長イブラヒム・アル=サライは、政府に対し、正体のわからない政治集団か過激派集団に組合の委員長や幹事が狙われているのでその安全を確保するよう政府に求めた。
ジャーナリスト組合が攻撃されたのはこれが最初ではない。
今年2月には、組合の委員長だったシハブ・アル=タミミが、バグダードで狙撃を受け、死亡した。2003年以来組合の委員長を務めてきたタミミは、米国のイラク侵略と米軍によるイラク占領継続を批判してきた。
2003年以来、イラクでは、こうした暗殺や拉致がまん延している。
イラクは、ジャーナリストにとって世界一危険な地域とみなされている。CPJによると、2003年以来、135人のジャーナリストが殺された。
メディア関係者が特に標的とされているようであるが、イラク政府はその事実を認めておらず、ジャーナリストの死はイラクを席巻している暴力一般の帰結であるとの見解を表明している。
ジャーナリスト組合の組合員で地元の新聞数紙に寄稿するフセイン・ファウジは、記者に対する攻撃が最近新たに起きるまで、イラクの治安状況は大きく改善されていたと語る。
「[最近まで]ジャーナリストとメディア関係者の環境はどちらかといえば良好でしたが、現在は、仕事をやめようかと真剣に考えています」とファウジは言う。
女性問題を専門に扱うイラクのラジオ局、ラジオ・アル=マハッバのプログラム・マネージャを務めるラウヒ・アフメドは、ジャーナリストを攻撃するのはテロリストと武装集団だと語る。
彼は、攻撃を阻止できず、実行犯を逮捕できないのは最終的に政府と治安当局の責任であると言う。
「政府が、ジャーナリスト殺害事件を取調べ、実行犯を処罰すれば、事態は全面的に変わるでしょうし、ジャーナリストの身は安全になるでしょう」と彼は言う。
彼はまた、政治家はメディア関係者の安全について配慮していないと述べ、議会でジャーナリスト保護法の採択が足止めを食っている状況を指摘した。
ヌーリ・アル=マリキ首相----ジャーナリストの殺害を非難はしているが、その保護のために充分な措置を講じていないと批判を受けている----は、ジャーナリスト保護法の草案を議会にはかった。この法律についてはほとんど知られていないが、伝えられるところでは、夏に議会の文化とメディア委員会に送られたという。けれども、公表はされていない。
「政府が議会に提示した法案はジャーナリストの保護を保証するもので、ジャーナリストをイラク社会の重要な構成員と見なすものです」と政府報道官アリ・アル=ダッバグはIWPRに述べた。
イラク人のメディア権利グループである「ジャーナリスティック・フリーダム・オブサーバトリー」(JFO)を率いるジアド・アル=アジリは、法律には、殺された記者の家族を政府が支援すること、負傷した記者の治療費を政府が担うことが必要であると語る。
ジャーナリスト組合の組合員でアル=ヨム・ラジオのニュース・エディタを務めるエマン・アル=ハッタブは、法案はもっと早く導入されるべきだったと言う。彼女は、タミミの殺害も最近の記者に対する攻撃も、政治的な意図に基づいてなされているものだと主張し、ジャーナリストを標的とした最近の暴力に対して独立調査が必要だと述べる。
最近の攻撃をうけ、JFOは、内務省と協力してジャーナリストの安全を守るプロジェクトを開始し、ジャーナリストに地図を提供し、またいくつかの出来事については、それを報道する際に護衛を付けることとしたという。内務省はまた、記者たちにヘルメットと防弾チョッキ、応急処置用品を提供する予定である。
アジリによると、この対策は、NGOの「イラク独立メディア」と協力して、ジャーナリストの安全のために進めるより大きなプロジェクトの一環である。
内務省の渉外・メディア局長アラー・アル=ターエーは、内務省はジャーナリストの仕事を支えるためにあらゆる手立てを尽くす予定であると語った。
「当初から私たちは明確な考えを持っており、ジャーナリストの問題を扱うあらゆる団体と協力してプロジェクトを進めたいと思っています。地域としても国際的にも、このプロジェクトは先駆的なものです」と彼は言う。
別の動きとして、IWPRはイラクのジャーナリストに対する安全対策コース「安全・治安・法的保護」を近く開催する予定である。コースはイラクのジャーナリストに、西洋で行われている、敵対的環境で活動するための訓練を提供する予定であり、メディア法についても訓練を提供する。
シャウカト・アル=バヤティはIWPRの訓練を受けたジャーナリストでバグダード在住。
投稿者:益岡